被相続人(祖父)が遺言書を作成していて、養子縁組をしていた孫、当時6歳で
現在は7歳に借入金付きの賃貸用不動産(土地と建物)を相続させる遺言書で、
遺言書通りに相続し、
相続申告も相続登記もすんでいます。
借入金の債務者変更はすんでいません。
借入金は相続開始時には約1億円です。
債務者変更ができていないため、現在は、被相続人の口座で借入金を毎月、口座引落で
返済している状況です。
借入先は農協ですが、
当初、農協の司法書士が利益相反になるので借入金の債務者変更はできないと言ってきました。
http://blog.livedoor.jp/imoto_office/archives/52261300.html
遺言書の場合でも遺産分割のときみたいに利益相反になるのでしょうか?
土地建物を担保に孫が入れて、さらにその孫の父が連帯保証金になるという話ですすんでいました。
孫の父も被相続人から相続しているため、いくらかの不動産と財産はあります。
どうしても利益相反という話がすすまなくて、孫に対して特別代理人を入れてくれということで
親戚を指定して特別代理人を農協の書類に記載してもらいました。
先に進んでいると思いきや、今度は借入金の名義変更をできないので、他行から借入をしてもらい
返済してくれといってきました。
つまり当行では借入は継続できないと言ってきました。
仮に孫が高校生ならできるみたいことを言っているみたいです。
法律上、何か問題点があるのでしょうか?
未成年者の借入については法律上、注意することがあるのでしょうか?
今回のように遺言書で指定があったり、
親が若く亡くなり、子供が未成年者であることはいくらでもあるように思いますが、
何かアドバイスなどあればいただけると幸いです。
個人的に考えたのは、
孫の父又は新設法人を設立して融資してくれる銀行を探して孫の賃貸不動産を売買して売買代金で孫は借入金を返済することができるのでは、と考えました。
ただし移転コストがかかるので、そのまま農協で債務者変更をしてくれるのが1番なのですが、通らない話なのでしょうか?
親子売買で利益相反になった場合は売買できないのか?特別代理人を選任すれば可能なのでしょうか?
または孫が親に売却できないなら第三者に市場で売却して借入金を消すしかないのでしょうか?
裁判所の判例では、法定相続人の中に未成年者がいて遺産分割協議を行うときは、
必ず、特別代理人の選任が必要になる、という判断です。
これは、たとえ親権者が利益を得ない場合であっても、不利益だけを受ける場合であっても、
特別代理人を選任し、特別代理人と協議することが必要です。
遺産分割協議という行為そのものが利益相反に該当する、という考え方です。
もう1つの、抵当権の債務者を親権者に変更する銀行との債務者変更契約でも、
特別代理人選任が必要です。
この場合も、抵当権の債務者を変更する契約書(案)を家裁に提出します。
この、遺産分割協議と抵当権の債務者変更の特別代理人選任は、
同時に、同じ特別代理人候補者で申立てることができます。
※遺産分割の時には利益相反という考えはると下記に記載があります。
>1年ぐらい前に亡くなった人の相続の案件で、
>被相続人(祖父)が遺言書を作成していて、養子縁組をしていた孫、当時6歳で
>現在は7歳に借入金付きの賃貸用不動産(土地と建物)を相続させる遺言書で、
>遺言書通りに相続し、相続申告も相続登記もすんでいます。
>借入金の債務者変更はすんでいません。
>借入金は相続開始時には約1億円です。
>債務者変更ができていないため、現在は、被相続人の口座で借入金を毎月、口座引落で
>返済している状況です。
>借入先は農協です
以上を前提として、借入金に関する法律関係を整理します。
まず、民法上、被相続人の債務は、
被相続人の死亡により相続人間で
法定相続分に従い当然に分割されるのが原則です。
遺言によって、法定相続分での分割とは
異なった分割方法(例えば、相続人の一人が
全債務を負担するなど)を定めたとしても、
相続人間では、効力がありますが、
債権者の承諾がない限り、債権者に対して
主張することはできません。
(なお、この点についてよくわからない
ということであれば、当メールの文末に、
私の過去のメルマガを掲載しますので、
「2」以降をご覧ください。)
今回のケースでは、
>借入金付きの賃貸用不動産(土地と建物)を相続させる遺言書
ということで、借入金も含めて、
孫に相続させる旨の
遺言ということだと思いますが、
相続人間の負担割合としては有効
です(仮に孫以外が支払った場合には、
その金額について孫に求償できる)が、
これを債権者である農協が承諾しない限り、
債権者である農協は、原則どおり、各相続人に対し、
法定相続分に応じて、請求できるということになります。
そして、承諾するかどうかは、
農協が自由に決められることです。
2 ご質問1について
(1)ご質問
>遺言書の場合でも遺産分割のときみたいに利益相反になるのでしょうか?
(2)回答
親権に関する利益相反行為とは、
外形から「客観的、類型的」に見て、
親権を行う父又は母とその子との
利益が相反する行為をいいます(民法826条)。
農協側の理解では、今回の債務者変更の合意を、
孫にかわり父親が行う行為は、父親自身が農協に対して
負っている債務を、孫が全額引き受けることを
合意することになるため(債務引受)、
利益相反になるということでしょう。
3 ご質問2について
(1)ご質問
>今度は借入金の名義変更をできないので、他行から借入をしてもらい
>返済してくれといってきました。
>つまり当行では借入は継続できないと言ってきました。
>仮に孫が高校生ならできるみたいことを言っているみたいです。
>法律上、何か問題点があるのでしょうか ?
>未成年者の借入については法律上、注意することがあるのでしょうか?
(2)回答
一般的には、未成年者が契約を行う場合には、
親権者が同意する、または代理しないと契約が
できないなどの問題点はありますが、
今回は、特別代理人を立てられているということなので、
この点については問題ないのだと思います。
もっとも、上記1の法律関係の整理のとおり、
債務者名義の変更に応じるかどうかは、
結局は農協に決定権があり、法的に問題がないから、
応じてもらえるというものでもありません。
農協が承諾しなければ、農協は、各相続人に対して、
法的相続分に応じた金額の返済を求めることができ、
各相続人はこれに従わざるを得ない立場にあります。
推測ではありますが、農協としても、
債務者名義の変更の際に、債務者となる方の返済可能性は
当然審査しますから、7歳の未成年に返済可能性があるのか、
という点に疑問符がついているのかと思います。
もう少し交渉の余地はあるのかもしませんが、
農協がOKと言わない限りは、
現状のまま進めざるを得ません。
なお、
>今度は借入金の名義変更をできないので、他行から借入をしてもらい
>返済してくれといってきました。
ということですが、農協から一括弁済を
強制する権限もありませんから、
これに応じる必要もないでしょう。
(おそらくそのような記載はないかと思いますが、
契約書に期限の利益喪等の項目で、
特別に一括弁済を請求できる場合について、
今回のようなケースが定められている
ということも考えられますので、
念のため、借入に関する契約書も
ご確認ください。以下のご質問3は、
そのような規定がない前提での回答になります。)
4 ご質問3
(1)ご質問
>個人的に考えたのは、
>孫の父又は新設法人を設立して融資してくれる銀行を探して孫の賃貸不動産を売買して
>売買代金で孫は借入金を返済することができるのでは、と考えました。
>ただし移転コストがかかるので、そのまま農協で債務者変更をしてくれるのが1番なの
>ですが、通らない話なのでしょうか?
>親子売買で利益相反になった場合は売買できないのか?
>特別代理人を選任すれば可能なのでしょうか?
>または孫が親に売却できないなら第三者に市場で売却して借入金を消すしかないのでし
>ょうか?
(2)回答
ご指摘の方法だと、利益相反にあたるため、
法的に有効なものとして親子間で売買契約を
行う場合には、特別代理人の選任を行うことに
なります(民法826条)。
もっとも、今回は、
このようなことをされる必要はないと考えます。
前述のとおり、農協は、一括で弁済を求める権限はなく、
仮に農協が債務者変更を承諾しないとしても、
各相続人に法定相続分に基づき、通常どおりの返済を
請求することができるにすぎません。
今回のケースでは、
>債務者変更ができていないため、現在は、被相続人の口座で借入金を毎月、口座引落で
>返済している状況
であれば、滞りなく債務の返済はなされており、
対農協との関係では、現状に問題はありません。
どうしても農協が、債務者変更を承諾しないということであれば、
孫が相続した賃貸用不動産(土地と建物)からの収益を原資として、
銀行に、月々返済をされればよいと思います。
遺言書で、農協への借入金債務はすべて孫が相続するという
ことになっているのであれば、相続人間の内部の負担割合は、
100%孫が負担することになっており、相続人間での
求償の問題も発生しないからです。
よろしくお願い申し上げます。
~~~~~~~~<以下、メルマガ転載>~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
遺言により有利に財産を相続しても、
債務は他の相続人と同一負担か?
税理士のための法律メールマガジン
2019年6月7日(金)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●●さま
さて、今回は、ある相続人が有利となる
遺言があるケースでも、
被相続人の債務は、すべての相続人が
法定相続分により負担することに
なるのかという点について、解説したいと思います。
例えば、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◯被相続人X
◯相続人 子A 子B
◯遺言に「全ての財産財産をAに
相続させる」旨の記載あり
◯Xには1000万円債務がある
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
というようなケースです。
遺言では、特定の債務の承継のみを
目的とすることはできない(例えば、
「1000万円の債務はBに相続させる」等)
ため、
負担付き遺贈(または相続させる旨の
遺言)としたり、特定の財産と紐付け
遺贈をしたりする必要があります。
それでは、上記のような遺言では
1000万円の債務について法定相続分通り、
AとBで500万円ずつと考えるのか、
それとも、全てのAが負担すると考えるのでしょうか。
この辺りは、各相続人の相続税申告に際して、
債務控除にも影響がある部分になります。
1 相続人間における債務の負担割合
「相続させる」旨の遺言は、「特定遺贈」とは異なり、
「相続分の指定」も伴うと解釈されることがあります。
特に、今回のような全部の財産を1名に相続させる旨の
遺言は、長年争いのあるところでしたが、
最高裁平成21年3月24日により一定の決着ついて
いるところです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最高裁平成21年3月24日
相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により
相続分の全部が当該相続人に指定された場合・・・省略・・・
特段の事情のない限り・・・省略・・・相続人間においては,
当該相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継するこ
とになると解するのが相当である
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この最高裁判例から、
相続人間では、Aが相続債務の全てを相続することになる
と考えられます。
つまりは、相続分の指定(法定相続分の変更)
が伴うものであると解釈されることから、
債務についても、その指定された相続分割合
(今回のケースでは、A100%)
で相続されることとなります。
2 被相続人の債権者との関係
ただし、相続人間では、
Aが1000万円全額の債務を負担するとしても、
被相続人の債権者との関係では注意が必要です。
つまり、債権者との関係では、債権者の同意がない
限り、法定相続分で、A・B500万円ずつ
債務を負うことになります。
遺言(遺産分割も同様)による債務の承継は、
被相続人側で決めるものであり、債権者には
関係ないことにもかかわらず、
被相続人側の意思で、
勝手に誰に債権を請求できるの決められる
とすると債権者としてはたまりません。
つまり、恣意的にお金のない人に債務を承継されては、
回収ができなくなるおそれが高まりますが、
それは認めませんよということです。
「1」は、あくまでも相続人間の問題であり、
Bは、債権者に対して、500万円の債務を
負いますが、
仮にBが500万円を債権者に支払った場合には、
BはAに対して、500万円を請求できる
という意味になります。
3 相続税申告の債務控除はどう考えるのか?
債権者との関係では、
法定相続分割合によって債務を負う
一方、
相続人間では、Aが全相続債務を負担することになる
ということで、相続税申告上、債務控除はどのように
考えるべきかという問題があります。
議論がない部分ではないですが、
相続税法第13条(債務控除)の規定が、
「その者の【負担】に属する部分」という表現を用いてる
ことから、Aが全ての相続債務を債務控除できる
と考えて問題ないでしょうし、
実務上もそのように運用されています。