倒産法 貸倒

債権調査票の記入(売掛金の貸倒れ)について

2019年1月:500万円の売掛金のある得意先(事業者)が夜逃げをしました。
2019年2月:その後、売掛金の回収について内容証明を送りましたが、返送される。
2019年6月:そして、最近、先方の弁護士から債権調査票が届きました。

債権調査票の書き方とそもそも債権についての考え方を教えていただけますでしょうか。
届いた債権調査票は、おそらく一般的な雛形のものです(検索すればでてくるようなやつです)。

1.取引内容について
基本的に毎月のように取引のある先です。
「最初の借入れ等」はどのように記載すべきでしょうか。
「最後の借入れ等」は最終の納品日、
「最後の返済」は最終の入金日を記載する予定です。

2.債務残高について
売掛金なので、遅延損害金等の定めはありません。
定めがない場合でも利息や遅延損害金を一方的に決めて請求してもよいのでしょうか。

3.債務者の破産又は免責に関する意見
どのようなことを書くべきか分かりませんが、
なにか記載すると有利になるような記述はあるのでしょうか。

宜しくお願い致します。

まず、前提として、一般的に「債権調査票」
と呼ばれるものは、債権者が破産手続きに
参加するための「破産債権届出書」
https://zeirishi-law.com/kashidaole/houtekiseiri/1#31
http://www.courts.go.jp/nagoya/vcms_lf/saikentodokedesyo-hasanH26.3.pdf

とは異なり、
破産予定者の代理人弁護士が、
破産申立の際の申立資料の作成に利用するものであり、
特に法的に定められたものではありませんし、
特段書き方に制限があるわけでもありません。

ただ、一般的に破産手続きをスムーズに
行うためになされるものですので、
提出する義務はないですが、提出してお
いた方が無難ではあるという程度のもの
とご認識いただければ良いかと思います。

以上を前提に以下、各ご質問に回答します。

1 ご質問①〜取引内容の記載について
>1.取引内容について
>基本的に毎月のように取引のある先です。
>「最初の借入れ等」はどのように記載すべきでしょうか。

現時点で残っている売掛金のうち、
一番古い売掛金債権が発生した日を記載することに
なるでしょう。

>「最後の借入れ等」は最終の納品日

と記載されるのであれば、それに合わせて、
一番古い商品を納品した日をご記載
いただけば良いでしょう。

2 ご質問②〜遅延損害金等の定めについて

>2.債務残高について
>売掛金なので、遅延損害金等の定めはありません。
>定めがない場合でも利息や遅延損害金を一方的に決めて請求してもよいのでしょうか。

記載をすることは自由ですが、
契約書に定めがない場合(または契約書がない)
には、

法的に利息や遅延損害金等を定めなかった場合の利息割合は、
法律で決まっていますので、
定めがないのに一方的に決めることはできません。

ご質問の前提事実からすると、得意先との取引は商行為であり、
その遅延損害金の割合は、
年6%となります(商法514条)。

3 ご質問③〜破産又は免責に関する意見について

免責の意見としては、破産法に免責にならない事由が
列挙されていますので(破産法252条1項)、
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=416AC0000000075#1522
それにあたる事情があるケースでは、
記載をすることが考えられます。

例えば、財産隠しをしている事実を知って
いれば、記載するというような形です。

免責に関する意見として、
破産予定者の代理人弁護士に伝えれば、
弁護士はこの事情も踏まえた上で、
破産の申し立てをすることになります。

また、記載内容にルールや制限はないので、
その他破産する取引先について、
言っておきたいことがあれば、自由に記載しても問題はないですが、
それが法的な意味を持たない場合には、
単なる意見として把握されるにとどまります。

なお、破産手続における配当は、
債権者の債権額に応じて案分してなされるため、
ここに何を記載しても、配当に関して
有利または不利になるということはありません。

よろしくお願い申し上げます。