その他

業務上横領罪の法的手続きについて

●業務上横領罪の訴えについて

経理担当の従業員が退職した後に、
何回に分けて会社預金の不正引き出しがあることが発覚した。
(約350万円)

この元従業員に、横領した金銭の返金交渉をする予定なのですが、
この元従業員が「自分が犯人ではない」と主張した場合に、

(質問①)
業務上横領罪として法的手続きを開始する場合の
順序(流れ)を教えて頂けますでしょうか?

(質問②)
銀行の窓口に設置されている防犯カメラの開示は、
検察等の国家機関からの要請のみ開示義務があるのでしょうか?

宜しくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①
>(質問①)
>業務上横領罪として法的手続きを開始する場合の
>順序(流れ)を教えて頂けますでしょうか?

大まかにいうと、通常、以下のような流れになります。

①警察に相談

②その後被害届、もしくは告訴状の提出

③警察が捜査開始、証拠収集

④有罪とできるだけのある程度の証拠がそろえば逮捕、その後、検察が起訴・不起訴を決定

まず、②の段階で、被害届または告訴状を
警察が受理してくれるかどうか、
というのが第一関門となります。

証拠が乏しく、最終的に有罪にできそうもない
ということだと、被害届や告訴状を受理してくれない
ということも往々にしてあります。
なので、この段階で、一定の証拠がある(または捜査すれば
出てくるだろう)ということが必要になります。

なお、警察が告訴状を受理した場合には、
絶対に捜査をしなければならず、その結果、
起訴・不起訴の処分を行った場合、
告訴人に、その結果を通知しなければなりません。
警察は、告訴されると、手続きとして煩雑になるため、
なかなか受理しようとしない傾向にあり、
被害届の提出よりも数段ハードルが高いです。

被害届、告訴状を提出した後の捜査やその後の流れは、
警察・検察に任せることになります。

業務上横領罪で法的な手続きを始めたい
ということであれば、まずは警察に相談に
行っていただければと思いますが、
本人も認めておらず、本人がやったという客観的な証拠もないと
いうことになると、被害届すら受理してくれない
という可能性もあり得ます。

なので、できるだけこちら側で、
証拠は揃えておいた方がよいでしょう。

2 ご質問②
>(質問②)
>銀行の窓口に設置されている防犯カメラの開示は、
>検察等の国家機関からの要請のみ開示義務があるのでしょうか?

防犯カメラ映像は、捜査機関からの
要請があれば出ますが、
それ以外の場合には、開示してもらうことは
なかなか難しいと思います。

まず、一般の方が開示を求めたところで、
金融機関がこれに応じることはないでしょう。

まだ可能性があるとすれば、弁護士に依頼して、
銀行に対して、弁護士会照会をかける方法です。
金融機関の対応によるところですが、
プライバシーの問題もありますし、
なかなか応じないのが一般的かと思います。

今回は犯罪性のある話ではあるので、
開示の必要性を訴えて、開示を求めていくことに
なるかと思いますが、少なくとも、
引き出しが行われた日時を特定して、
その範囲に限定して照会をかけていかないと
開示してもらうのは難しいでしょう。

どうしても他の証拠が集まらないということであれば、
やってみる価値はあるとは思います。

なお、防犯カメラ映像の保存期間は、
一般的には数か月からせいぜい半年程度でしょうから、
この期間を過ぎると、データ自体がなくなってしまう
可能性がありますので、動かれるのであれば、
早めの方がよいと考えます。

よろしくお願い申し上げます。