労働法 税理士法 税理士賠償責任

税理士が労働法等の確認をすることについて

顧問先から、下記の内容の確認報告書を作成できないかとの
相談を受けました。

           記

某国立研究開発法人●●開発機構からの
委託業務  (中略)  に係る委託業務従事日誌の従事時間等の
記載内容について、コンプライアンス上の観点から確認したところ、
労働基準法その他の労務に係る国内の法律等に照らし、違法な点を
発見しなかったことを報告します。

これは、某国立研究開発法人●●開発機構からの受託業務で
人件費を含む経費を某国立研究開発法人●●開発機構が負担するという
内容の契約に基づくものです。

その際、労務費の集計が必要であり、某国立研究開発法人●●開発機構からの
要請ではないものの某国立研究開発法人●●開発機構に対する
保険として顧客が第三者の確認書を作成したいとの内容で相談を受けました。
また、実際に「労働基準法その他の労務に係る国内の法律等に照らし」のような業務
はしていません。

委託業務従事日誌の内容は業務の開始時間と終了時間をカレンダー形式で集計する
簡易なものです。

この場合、顧客と某国立研究開発法人●●開発機構
で何かしらのトラブルが起きた際に税理士として
リスクが及ぶように思いますがいかがでしょうか。
また、リスクが及ぶと考えられる場合に、どのような文言で作成すれば
リスク回避とすることができるでしょうか。

顧客の立場としては確認書の具体的内容よりも、第三者の目が通っていることを
重要視しており、私としてもできる限り協力したいと考えております。

よろしくお願い致します。

1 ご質問①
(1)ご質問

> この場合、顧客とNEDOで何かしらのトラブルが起きた際に税理士として
>リスクが及ぶように思いますがいかがでしょうか。

(2)回答

ご質問にある委託業務従事日誌は、
某国立研究開発法人●●開発機構
に対して、業務委託契約に基づく報酬を請求する場合の
金額算定根拠となるものと思います。

この委託業務従事日誌と合わせて、
ご質問にある先生が作成された確認書を
一緒に提出した結果、
たとえば、業務従事時間に虚偽あったとか、
確認書の内容が虚偽であったとかの場合、

理論上は、これに基づき支払われた報酬について、
刑事上の詐欺や、民事上の不法行為責任などに
基づき損害賠償請求をされるという可能性がないではありません。
(顧客と先生が共同で、このような行為を行った、
または顧客の行為を手助けしたという意味合いで)

ですので、リスクとしてはなくはないという結論になります。
(正直、お勧めはしません)

ただ、実際に、先生が監査的な業務を行った上、
その判断に基づき、確認できた範囲で内容を記載する
ということであれば、仮に調査などに不備があったとし
ても、税理士の先生は法務の専門家というわけではない
ため、責任を問われない可能性が極めて高いかと思います。

2 ご質問②
(1)ご質問

> また、リスクが及ぶと考えられる場合に、どのような文言で作成すれば
>リスク回避とすることができるでしょうか。

(2)回答

上記の通り、確認にミスがあったと
しても責任を問われるという可能性は
低いと思いますが、

実際には、「確認をしていない」
にもかかわらず、「確認をした」と
記載してしまえば、それは明確な虚偽ということに
なりますので、リスクがあると思います。

ただ、現実論としては、それでも、
確認の有無を先方が立証できるのか?という
問題はありますし、問題がなければ何も
問題は起きないということになります。

しかし、仮に故意による不正請求などが
あった場合には、問題が大きくなりやすい
(警察が動きやすい)分野ですので、注意が必要
かなとは思います。

ご質問では、

>また、実際に「労働基準法その他の労務に係る国内の法律等に照らし」のような業務
>はしていません。

ということですので、実際に、
法規違反行為があるかないかを、
全く確認しないまま、このような確認書を
作成させることは、あまりおすすめはできません。

文言としては、
実際にはやったことの範囲でお書きになるのが
良いかと思います。

例えば、「委託業務従事日誌を確認したところ、
残業代の計算は合っていた」などにし、
実際にやったことと合っている内容で
ご作成する方が良いかなと思います。

>顧客の立場としては確認書の具体的内容よりも、
>第三者の目が通っていることを重要視しており、私としてもできる限り協力したいと考えて
>おります。

あとは上記のリスクと
そこに「確認報告書」があること自体の
メリットとの兼ね合いになるのかなと思いますが、
それをすることが本当にお客様にメリットがあるのか?
というところは疑問がないではないので、

その辺りもご考慮の上で、ご意思決定いただければ
と思います。

よろしくお願い申し上げます。