会社法

合同会社を休眠した場合の退職の是非

【前提】

合同会社で代表社員一人で事業を行っています。

【質問】

会社を休眠会社にして退職することは可能でしょうか。

1 ご質問および回答の結論

>合同会社で代表社員一人で事業を行っています。
>会社を休眠会社にして退職することは可能でしょうか。

ご質問の趣旨としては、
合同会社を休眠にして1人社員がいったん退社
(出資者の地位の喪失)し、
今後事業を行いたいと思ったタイミングで
社員に復帰して事業を継続することが可能か否か、
ということかと思いますが、

結論としては、これはできないと考えらえます。

2 回答の理由

(1)社員がいないなくなった場合の解散

下記(2)に記載しているとおり、
合同会社において1人社員の退社が
認められるか否か、
という問題もありますが、

仮にこれができるとしても、
社員がいなくなった場合、
自動的に合同会社は解散となります。
(会社法641条4号)

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(解散の事由)
第641条 持分会社は、次に掲げる事由によって解散する。
四 社員が欠けたこと。
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したがって、社員の退社の登記をする
場合には、あわせて解散の登記申請を
行わないと受理されません。

社員が欠けたことにより合同会社が
解散となった場合には、清算手続に入り、
もう事業を行うことはできませんし(645条)、
その後、解散を取り消して、
事業を継続することもできません。
(642条1項反対解釈)

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(清算持分会社の能力)
第645条 前条の規定により清算をする持分会社(以下「清算持分会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。

(持分会社の継続)
第642条 持分会社は、前条第一号から第三号(※永吉注:「社員が欠けたこと」は含まれていない)までに掲げる事由によって解散した場合には、次章の規定による清算が結了するまで、社員の全部又は一部の同意によって、持分会社を継続することができる。
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今回のご質問の趣旨としては、
合同会社を休眠にして1人社員が
いったん退社し、今後事業を行いたいと
思ったタイミングで社員に復帰して
事業を継続することが可能か否か、
ということかと思いますが、

結論としては、これはできないと考えらえます。

なお、合同会社における「休眠」は、
税務署等に届書を出すだけであり、
会社法上特別な扱いがなされている
わけではないので、「休眠会社」で
あることは結論に影響しません。
(なお、「株式会社」については、
みなし解散の規定があります(会社法472条))

(2)1人社員の合同会社における退社の可否(補足)

ご質問に対する回答としては、
上記のとおりですが、

そもそも、1人社員の合同会社において、
当該社員が退社することが許されるか、
という問題がありますので、
補足でご説明します。
(必要なければ、お読みいただかなくても
大丈夫です)

今回の退社の理由として
考えられるものとしては、以下が挙げられます。

①会社への6か月前までの予告による事業年度終了時点での退社(会社法606条1項)
②「やむを得ない事由」による即時の退社(会社法606条3項)
③総社員の同意による退社(607条2号)

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(任意退社)
第606条
1 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。
・・・
3 前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。

(法定退社)
第607条 社員は、前条・・・の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
二 総社員の同意
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では、そもそも社員が1人の状態で、
当該社員が退社することができるかというと、
実はこの点については、明確な判例はなく、
実務上の見解も固まっていません。

ただ、登記実務としては、
私の知る限り、このような登記も可能と
認識しています。
もちろん、「社員が欠けたこと」を
理由とした解散の登記の申請も
同時に出す必要があります。

ただし、登記については、管轄の法務局により、
扱いが異なることが往々にしてあるので、
万が一、このような登記を行われるという
場合には、管轄の法務局に、可能か否かを
事前相談された方がよいと思います。

よろしくお願い申し上げます。