相続 会社法

有限会社の代表取締役が死亡した場合の代表取締役の登記

代表取締役1名、取締役1名、監査役1名の有限会社の
代表取締役が死亡しました。

現在の取締役を代表取締役として登記する方法をご教示下さい。

定款の記載により、以下のように分岐があります。
1 ご質問

>代表取締役1名、取締役1名、監査役1名の有限会社の
>代表取締役が死亡しました。
>現在の取締役を代表取締役として登記する方法をご教示下さい。

2 回答

以下では、
(1)代表取締役の選任方法

(2)具体的な登記手続
の順にご説明します。

(1)代表取締役の選任方法

代表取締役の選任方法は、法律上、
以下があります(会社法349条3項)。

①定款で直接定める
②取締役の互選により定める(定款によりこのような定めがある場合のみ可能)
③株主総会決議にて定める(会社法施行後の名称は、特例有限会社でも株主総会になります。)

定款の記載により選任方法が異なりますので、
まずは、定款の記載をご確認ください。

以下、定款の内容を想定して、選任方法をご説明します。

ア 方法①について

①は、直接定款で指定する(氏名を記載するなど)という方法で、
指定された人が当然に代表取締役となります。
特に選任に関する手続きは必要ありません。

ただ、この記載がなされていることはほとんどないかと思います。

イ 方法②について

②の記載がある場合には、取締役の互選により定めることになりますが、
取締役が1人の現状では「互選」により選任することはできません。

この場合、定款の規定を①または③に変更してから、
その方法に従って選任するのが確実です。

ただ、②について、
「取締役2名以上の場合、取締役の互選により代表取締役1名を定める」
というような規定になっており、
代表取締役が死亡し、残りの取締役1名になってしまった場合、
この規定は、
「取締役が2名の場合には代表取締役を互選により定めるが、
取締役が1名の場合にはその者が当然に代表取締役になる」
という趣旨と解され、
当然に残された取締役が代表取締役になるという解釈も成り立ち得ます。

このように考えれば、取締役の互選によることなく、
選任手続きなくして当然に、残り1名の取締役が、代表取締役となります。

ただ、②の規定が、上記のような解釈ができるかどうかは、
定款の具体的な文言や、登記官の判断によっても変わる部分です。
実際に登記を行われる際には、
定款の記載内容をもとに、登記申請を行う法務局と事前協議のうえ、
行った方がよいでしょう。

ウ 方法③について

定款に、
・③の規定がある場合
または、
・選任方法について何の規定もなされていない(①及び②の規定がない)場合
には、
株主総会にて、代表取締役を選任することになります。

(2)具体的な登記手続

登記申請の際には、
以下のア~ウの申請書類をまとめて、
管轄法務局に提出することになります。

ア 代表取締役の死亡の登記(退任)

まず、亡くなった代表取締役の死亡の登記が必要になります。
申請の際の添付書類は以下です。

・登記申請書
・代表取締役の死亡を証明する書面(除籍謄本、親族から会社に対する死亡届、死亡診断書など、いずれか1つ)

イ 代表取締役の選任登記

現在の取締役が、代表取締役となる(代表権を有する)という登記が必要になります。
申請の際の添付書類は、上記(1)で挙げた選任方法により異なりますので、
パターン別に説明します。

(ア)①もしくは②の定款規定で当然に現在の取締役が代表取締役となる場合

・登記申請書(上記(2)アの申請書とあわせて1通に記載する)
・定款

(イ)③の方法(株主総会決議)により代表取締役を選任した場合

・登記申請書(上記(2)アの申請書とあわせて1通に記載する)
・株主総会議事録
※残りの取締役が代表取締役の就任を承諾した旨も記載、かつ、残りの取締役の個人実印にて捺印が必要
・株主総会議事録に記名・捺印した取締役(今回のケースでは残りの取締役)の個人印鑑証明書
・株主リスト

ウ 会社の代表印の変更に関する手続き

代表取締役が変更となった場合は、
登記の申請書に押印する新代表取締役は、
代表印を法務局に届け出なければなりません。
そこで、会社の代表印の変更の手続が必要になります。

申請には以下の書類が必要です。

・印鑑届書
・新代表取締役の個人印鑑証明書(上記イ(イ)で提出する場合は、あわせて1通で可)

よろしくお願い申し上げます。

前回は分かり易く、実務的なご説明ありがとう御座いました。
継続した質問となります。

代表取締役を変更した場合
1.法務局への「印鑑届出書」の提出は必要ですか。
2.従来使用していた会社代表印を再利用できますか。
3.印鑑カードの再利用へできますか。

>1.法務局への「印鑑届出書」の提出は必要ですか。

必要です。

登記申請の際に、新しい代表取締役が、
登記申請書に会社代表印を捺印して登記申請することになりますので、
これとあわせて印鑑を届け出なければならないということです。

>2.従来使用していた会社代表印を再利用できますか。
>3.印鑑カードの再利用へできますか。

いずれも可能です。
いずれについても、従前のものを使用していただいてもよいですし、
新しいものを利用していただいても構いません。

なお、先ほどのご質問への回答の中で、
「会社の代表印の変更に関する手続き」という文言を使用していましたが、
必ずしも「印鑑自体」を変更しないといけないという趣旨ではありません。

よろしくお願い申し上げます。