なお、相談の依頼者は農地の所有者(地主)です。
■経緯
数十年前から借主に対して農地を使用貸借で使用させていましたが、
5年前に、地主から借主に対して、「この土地を売却したいので、
来年以降の耕作は中止するように」と連絡をしたため、その後は、
耕作は行われておりませんでした。
この5年の間に、借主から離作料について何ら申し出はありません
でしたが、今年に入って土地の売買契約が成立し、土地の地盤改良
工事等が始まったところ、借主から50%の離作料をいただきたいとの
連絡がありました(この土地の所在地の借地権割合は50%です。)。
なお、この契約を結んでいた地主は、昨年他界し、この土地を相続した
配偶者が売主となり、土地を売却しました。
■地主と借主とで交わした覚書の内容
『甲と乙は相互の信頼に基づき、当事者一代限りの土地の使用貸借につき
次のとおり合意した。
① 甲は後記土地を乙が晃作し収益することを認める。ただし、毎年度の
始め(翌年度収穫作物の播種前)に甲・乙夫々継続の意志が合致しな
ければ、本契約は終了する。なお、当事者の一方が死亡したときも
当該耕作年の終了と同時に本契約は終了する。
② 乙は本件使用中は善良な管理者の注意をもって管理し、耕作地以外と
して使用したり第三者に転貸したりしてはならない。
③ 乙は本件借地を地味豊かな耕作地として維持管理することに万善の
注意と努力をはらうことを甲に対し約束する。
④ 乙において病気その他の事情により耕作者としての実体が損なわれる
に至るときは、契約本旨の重大な欠落として当該耕作年をもって本契約
は解約される。
昭和〇年〇月〇日
甲 *********
乙 ********* 』
■質問事項
上記のケースにおいて、
質問1.地主は借主に対して離作料を支払う必要はあるのでしょうか?
質問2.支払う必要がある場合には、離作料の支払基準となるものは
あるのでしょうか?
ご教示の程、宜しくお願い致します。
>質問1.地主は借主に対して離作料を支払う必要はあるのでしょうか?
>質問2.支払う必要がある場合には、離作料の支払基準となるものは
> あるのでしょうか?
離作料を支払う法的な義務はありません。
また、すでに使用貸借契約は終了しているため、
離作料を支払って、契約の解約に応じてもらう
必要性もありません。
2 回答の理由
(1)離作料の支払義務
貸主(地主)と借主との間で、農地の賃貸借(使用貸借)を合意解約する場合、
慣行として離作料が支払われることがあります。
ただ、これはあくまで慣行として行なわれているものにすぎず、
貸主に法的な支払義務があるわけではありません。
離作料は、借主に合意解約に応じてもらえるようにするために、
貸主が任意に支払う場合があるというものにすぎません。
なお、今回は、下記のとおり、使用貸借契約自体も終了しているため、
離作料を支払う合理的な理由がさらにないケースといえます。
ですので、離作料の支払い請求に応じる必要はありません。
(2)使用貸借契約の終了
地主と借主との覚書①に、
>当事者の一方が死亡したときも
> 当該耕作年の終了と同時に本契約は終了する。
とあり、
>この契約を結んでいた地主は、昨年他界し、
とのことなので、昨年の耕作年をもって、
農地の使用貸借契約は終了していると考えられます。
ですので、使用貸借契約の合意解約を得るために、
こちらから離作料を積極的に支払うという
必要性も特にありません。
よろしくお願い申し上げます。