前提
(1)被相続人に、子A,B,C,Dあり(被相続人の配偶者は既に死亡)
(2)そのうち、Cはおよそ30年前に死亡のため、Cの代襲相続人としてCの子
E,Fの合わせて5名が相続人
(3)Cが亡くなった後も、Cの妻が被相続人と同居し、被相続人の面倒を見てい
た。
(4)同居後20~25年ほどは、被相続人から生活費をもらっていなかった。(こ
こ、数年はもらっている)
(5)遺言の付言事項によれば、
「Cの妻は、Cが亡くなってからも私と同居し、いろいろ世話をしてくれました。
Cの妻には大変感謝しています。一方、私の残る3人の子供達(A,B,D)には、
これまで相当な金額の財産を贈与しました。ですから、私の遺産は全てCの妻とE,
Fに
受け取ってもらうことにしました。私の3人の子供達は、私のこのような気持ちを理
解し、
遺産をめぐっての相続争いなどは決してしないよう切に希望します」
この状況の中、E,Fが「親族で揉めたくないので、遺言書ではなく、遺産分割協議
にしたい」旨申しております。
そこで、下記お尋ねいたします。
【1】仮に遺産分割協議をして不調に終わった場合に、「不調なので遺言どおりとさ
せてもらう」ということで、
当初の遺言どおりに落ち着かせることは、果たして可能なのでしょうか。
私の素人考えでは、分割が不調なので遺言どおりというのは、せっかくの遺言の権利
を放棄したように思えて、
難しい気がするのですが。
(私個人的には、まず遺言どおりとして、不服なら遺留分の減殺請求をすればよいと
思っております。)
【2】仮に分割協議をする中で、付言事項にある様に「相当の財産を贈与した」とあ
るので、特別受益として
持戻しの対象となり得ますか。
(残念ながら、実際いくら渡っているのかは、不明です)
【3】仮に「相当の財産を贈与した」金額を調べる際、銀行は入出金のデータを何年
間保管しているものなのでしょうか。
(実際に行えば、手数料がものすごいことになると思いますが)
【4】 私が遺言執行者に選任されておりますが、遺産分割を選択させることは執行
者の職務に違反しないのでしょうか。
包括遺贈(遺産の全部・全体に対する配分割合を示して、遺贈するもの)か、特定遺贈(特定の財産に対して、全部または割合を示して、遺贈するもの)かにより、Cの妻に生じる法律関係が異なってきます。
付言のみではその部分が明らかではありませんが、一般的には「特定遺贈」であることが多いので、その前提で回答いたします。もし、異なる場合には、お手数をおかけしますが、再度ご質問ください。
また、前提事項→回答となってしまいますが、ご了承ください。
1 Cの妻への特定遺贈財産について(前提事項)
まず、Cの妻への特定遺贈対象財産は、遺言の効力発生後(相続開始時)に、Cの妻へ移転し遺産の範囲から抜けてしまいますので、遺産分割を選択するとしても、Cの妻の「遺贈の放棄」(986条)がない限りは、遺産分割の対象財産にはなりません。
仮に、Cの妻が「遺贈の放棄」をすれば、相続時にさかのぼって、この遺贈はなかったことになりますので、遺産分割の対象財産となります。
しかし、その場合には、Cの妻は相続人ではないため、遺産分割に参加できないということになります。
ですので、少なくとも、特定遺贈の対象の財産については、遺贈の放棄をすることなく、遺言どおりとした方が良いかと思います。
2 今回の質問への回答(特定遺贈財産以外の財産についての遺産分割について)
(1)遺産分割が不調の場合
>仮に遺産分割協議をして不調に終わった場合に、「不調なので遺言どおりとさせてもらう」
>ということで、当初の遺言どおりに落ち着かせることは、果たして可能なのでしょうか。
実務上、共同相続人(代襲相続人含む)間で、全員の同意の上、遺言内容と異なる遺産分割協議をすることはできますが、遺産分割協議が合意に至らないうちは、遺言の内容の効力は維持されたままです。ですので、遺産分割協議がまとまらなかった場合、「不調なので遺言どおりとさせてもらう」ということで、当初の遺言どおりとすることは可能です。
なお、前述のとおり、特定遺贈の場合には、相続人に対してのものであっても、遺贈の放棄という概念が入る余地がありますが、おそらく代襲相続人に対しては、「相続させる」旨の遺言がなされていると考えられますので、この場合、実務上は遺産分割協議が不調である以上、相続放棄手続をしなければ取得した財産を放棄するということにはなりません。
(2)特別受益該当性
>仮に分割協議をする中で、付言事項にある様に「相当の財産を贈与した」とあるので、特別受
>益として持戻しの対象となり得ますか。
贈与した財産は、特別受益の対象となり得ます。
ただ、贈与された財産が必ずしも特別受益となるわけではなく、特別受益として持戻しの対象となるかどうかは、贈与金額や贈与がなされた趣旨などから判断することになります。とても抽象的な基準ですが、贈与された財産が、「相続分の前渡し」と認められる程度の高額の贈与であれば、原則として特別受益になるとされています。
親の子に対する贈与の場合、一般的に、扶養的金銭援助の範囲内の贈与は、特別受益にあたらないと解されています。
今回のケースでは、まずは、どの程度の金額の贈与が、どのような趣旨でなされたのかをご確認いただき、特別受益に該当するかどうかをご判断いただくことになります。
(3)贈与した事実を裏付ける入金データ
>仮に「相当の財産を贈与した」金額を調べる際、銀行は入出金のデータを何年
>間保管しているものなのでしょうか。
>(実際に行えば、手数料がものすごいことになると思いますが)
ア 入出金のデータが取得できる期間について
入出金のデータが取得できるのは、一般的に、取引履歴の開示を請求したときから10年前までです。なお、それ以前の履歴についても、データが残っていれば、出してくれる金融機関もあります(ゆうちょ銀行は、比較的柔軟な対応をしてくれるイメージです。)。
イ 請求ができる人
請求できる人は、相続人か遺言執行者です。
ウ 手数料について
金融機関によって手数料は異なりますが、10年分取寄せたとしても数万円というところで、そこまで高額ということはないかと存じます。
エ 開示請求のための必要書類等
必要書類は金融機関により異なりますが、以下のものは必要になるものと思います。
詳細は、対象の金融機関にご確認ください。
①被相続人の除斥謄本(死亡の記載があるもの)
②相続人が請求する場合:相続人の戸籍謄本(相続人であることがわかる戸籍謄本)
遺言執行者が請求する場合:遺言執行者選任の記載がある遺言書
③請求する人の実印
④実印の印鑑証明書
(4)遺言執行者の職務上の義務との関係
>私が遺言執行者に選任されておりますが、遺産分割を選択させることは執行
>者の職務に違反しないのでしょうか。
遺言執行者の善管注意義務違反になるのかが問題になりますが、
すべての相続人から、同意を得た上であれば、基本的には、通常問題となることはありません。ただし、相続人全員の同意を得たことを書面等の証拠で残しておくことをお勧めします。
特に、今回は問題ないかと思いますが、Cの妻が「遺贈の放棄」となるような形で進めてしまうとCの妻には大きな不利益が生じますので、このあたりはご注意いただければと存じます。それでも、Cの妻が遺贈を放棄するということでしたら、しっかりと書面による同意を得ておくべきかと存じます。
なお、見解の相違もあるところですが、相続人全員で、遺言内容と異なる遺産分割協議をしたとしても、これに遺言執行者が同意が必要とされています。なぜなら、遺言執行者がいる場合には、相続人は遺言の執行を妨げる行為をすることはできないとされているからです(民法1013条)。
3 最後に
E、Fが「親族で揉めたくないので、遺言書ではなく、遺産分割協議にしたい」旨おっしゃっているということですが、揉め事を防ぐために作られた遺言とは異なる合意をするとするとその過程で、逆に親族で揉める可能性がでてくる場合があります。
全相続財産を見てみなければ(不動産はどうなっているのか、株式はどうなってるか等)、なんとも申し上げ難いのですが、●●先生もご指摘のとおり、一般論としては、遺留分減殺請求があった場合に、遺言の内容を前提としつつ遺留分減殺の価額弁償の合意をまとめるという方向をご検討された方が良いかとも思います。
もし、全体対象財産を考慮した上で、ベターな方法をご検討される場合には、無料面談による相談も可能ですので、ご連絡ください。
よろしくお願い申し上げます。
遺言書を確認したところ、以下の様な記載があり、特定遺贈と判断いたしました。
従いまして、先生ご回答の内容については、前提から変更がないように考えております。
また、最後に先生がおっしゃっていただいたことを、●●も危惧しております。
恐らく、遺産分割協議になれば、「均等に頭割り」との線で主張されることが予想され、
受遺者側は、遺言の内容から大幅に後退することになるのではないかと感じております。
そこで、追加の質問も含め、整理をさせてください。
(代襲相続人に、どのような説明をすれば効果的か…)
1.遺言書がある以上、Cの妻については「遺贈の放棄」、代襲相続人E,Fについては「相続放棄」をしなければ、
相続財産の帰属については、遺言書の内容で確定している。【質問1】
2.親族で揉めたくない心情は充分理解できるが、実母がそのような遺言を残さざるを得なかった事情を考えれば、
やむを得ないのではないか=Cが亡くなった時点で、他の子どものところへ行かなかった理由は何か)
仮に、遺産分割協議になっても、揉めることは目に見えていると●●は感じているので、いずれにしても
揉めるのであれば、遺言どおりがよいのではないか。
3.仮に、遺産分割協議になっても、Cの妻の遺贈分については、「遺贈の放棄」をせず、そのまま遺言どおりとする。
(なぜなら、Cの妻は相続人でないため、遺産分割協議には加われないことと、被相続人の遺志を尊重することから)
⇒この時点で既に揉めるでしょう。
4.強行手段として、「遺言執行者の立場からは、被相続人の最後の遺志を尊重すべきことから、遺言どおりとするべきで、
ある。もし、遺産分割協議をするのであれば、当初の遺言の内容に近い分割が出来ないのであれば、当事者が了承しても
遺言執行者の立場からは民法1013条の規定により了承しない。となると、分割協議が相当長引く可能性がある。」【質問3】
【質問1】
(1)代襲相続人E,Fについての「相続放棄」は、文言は「相続放棄」ですが、法律的には「遺贈の放棄」ということに
なりましょうか。
すなわち、家庭裁判所へ申述をする「相続放棄」とは同じでないという理解でよろしいでしょうか。
と申しますのは、家庭裁判所での「相続放棄」ということであれば、もし、相続開始から3か月を経過していたら、
受遺者である代襲相続人については遺言の内容が確定しており放棄はできないということでしょうか。
【質問2】.特別受益については、いわゆる民法上の扶養義務を果たす範囲であれば、該当しないと理解しております。
持戻しを考えるにあたり、もう少し範囲が広いと言うことでしょうか。
例えば、会社経営がうまくいかず、「おふくろ、助けてくれよ」と200万なり500万なり拠出したというのは、
扶養義務の範囲を超えていると考えますが、いかがでしょうか。
(言い方の問題ということもあるのでしょうが。つまり、会社経営ではなく、(会社経営が苦しくて)孫の教育資金が
捻出できない、ということであれば、難しくなるのかな、とも考えております)
【質問3】このような考え方は、合理的なのでしょうか。
ーーー遺言書始まりーーー
第1条 遺言者は、遺言者が所有する不動産を、Fに相続させる。
(いわゆる普通の戸建て住宅の、土地・建物です。それぞれ被相続人の持分2分の1)
第2条 遺言者は、遺言者の有する下記の金融資産につき、遺言執行者をして解約、払戻しして換価させ、
その換価金から下記の債務及び諸費用を控除した残金を、Cの妻、E及びFに各3分の1の割合で配分し、
それぞれ遺贈し又は相続させる。
<金融資産の表示>
(1)◯◯銀行××支店の預金全部(口座番号XXXXXXXほか)
(2)(略)以下、預金、株式、投資信託等が記載されております
ーーー遺言書終わりーーー
ご参考まで、財産の価額については、以下のとおりです。
不動産の相続税評価額(2分の1後)およそ1,000万円
その他金融資産 3,700万円
銀行のデータ開示の期間についても、ありがとうございます。
別途面談によるご相談ももしかしたら…と考えております。
よろしくお願い申し上げます。
1 ご質問①~E、Fが放棄することの意味~
(1)ご質問および回答の結論
>【質問1】
>(1)代襲相続人E,Fについての「相続放棄」は、文言は「相続放棄」ですが、法律的
>には「遺贈の放棄」ということになりましょうか。
>すなわち、家庭裁判所へ申述をする「相続放棄」とは同じでないという理解でよろしいで>しょうか。
>と申しますのは、家庭裁判所での「相続放棄」ということであれば、もし、相続開始から>3か月を経過していたら、
>受遺者である代襲相続人については遺言の内容が確定しており放棄はできないというこ>とでしょうか。
今回の遺言の内容は、相続人E、Fに関していえば「遺贈」ではなく、「遺贈の放棄」のように遺贈で定められた財産のみを放棄することはできないと考えられ、放棄をするためには「相続の放棄」(相続人であるという地位自体を放棄)をする必要があります。
ただし、相続人全員の同意のもと、E、Fが「相続させる」とされた財産も含めて、相続人全員で遺産分割をしてその配分を決めることは可能です。今回もこの方法によれば、「相続の放棄」をすることなく、E、Fが遺言で「相続させる」とされた財産を放棄したのと同じ効果を得ることができます。
(2)回答の理由
ア 相続させる旨の遺言の法的性質
遺言の第1条および第2条において、相続人であるE、Fに財産を「相続させる」とされており、これは、法律上、遺贈とは異なるものです。
相続人に対して財産を「相続させる」という遺言は、判例上、遺贈ではなく、遺産分割方法の指定(場合によっては、相続分の指定の趣旨も含む)であると解されています。「相続させる」という遺言がなされた場合、遺言の効力発生(被相続人の死亡時)と同時に、財産は、相続させるとされた相続人に直接承継され、相続人が取得することになります。
相続人に対して「相続させる」という遺言は、法律上、遺贈とは異なる特別なものとして扱われています。
イ 相続させる旨の遺言で指定された財産の放棄の可否
前回のご回答でも申し上げたとおり、遺贈を受けた人は、いつでも「遺贈の放棄」ができるとされています(民法986条)。
一方、「相続させる」旨の遺言の場合、裁判例では、遺贈の場合とは異なり、その利益を放棄することはできないとされています(反対する見解もありますが。)。「相続させる」旨の遺言の対象とされた財産は、効力発生と同時に、「相続させる」とされた相続人に承継されるので、その利益を放棄する余地はないというのがその理由です。
ウ 相続させる旨の遺言で指定された財産を放棄するための方法
では、「相続させる」とされた相続人は、財産が不要な場合にも、「相続の放棄」をしない限り、必ず財産を取得しなければならないかというと、そうではありません。
上記の裁判例のとおり「相続させる」という遺言がなされると、その利益を放棄することはできないとされていますが、相続人全員の同意のもと、「相続させる」とされた財産も含めて、遺産分割協議をし、その配分を決めることまでは禁止されていません。ちょっとわかりにくいですが、要は、相続人の全員が放棄することに同意していれば大丈夫ということです。
今回も、E、Fに「相続させる」とされた財産を含めて遺産分割をするとすれば、他の相続人にとっては自分が取得する財産が増えることになるので、おそらく拒否する人はいないと思われます。E、Fがどうしても、遺言で指定された財産が不要で、相続人全員で分けたいということであれば、他の相続人を交えて、遺産分割協議を行うことで、目的は達成できるでしょう。
2 ご質問②~特別受益該当性~
>【質問2】.特別受益については、いわゆる民法上の扶養義務を果たす範囲であれば、該>当しないと理解しております。
>持戻しを考えるにあたり、もう少し範囲が広いと言うことでしょうか。
>例えば、会社経営がうまくいかず、「おふくろ、助けてくれよ」と200万なり500万>なり拠出したというのは、
>扶養義務の範囲を超えていると考えますが、いかがでしょうか。
>(言い方の問題ということもあるのでしょうが。つまり、会社経営ではなく、(会社経営>が苦しくて)孫の教育資金が
>捻出できない、ということであれば、難しくなるのかな、とも考えております)
ご質問の例でいうと、事業資金のために200万円なり500万円というある程度高額な贈与がなされたということであれば、特別受益として持ち戻しの対象となる可能性が高いといえます。
一方、贈与がなされたのが、「孫の教育資金のため」ということであれば、一律に扶養義務の範囲内で、特別受益にあたらないかというとそうでもありません。最終的には事実認定の問題であり裁判官によっても判断は揺れるところですが、200万円なり500万円というまとまった額の贈与がなされていれば、特別受益とされる可能性はあるでしょう。通常、祖父母が子に対し、孫の教育資金としてまとまった額の贈与をするというのは、それほど一般的なことではないと思われますので。
親が子に対して、子の大学費用などの教育資金を贈与するのは、一般的には、扶養義務の範囲内であり特別受益にはあたらないとされていますが、祖父母が子に対して、孫の教育資金として贈与をするのは、これとは意味合いが異なりますので、特別受益とされる可能性は十分にあると考えられます。
3 ご質問③~遺言書の内容を尊重することの合理性~
>【質問3】このような考え方は、合理的なのでしょうか。
●●先生のお考えは合理的であると思います。
遺言執行者は、第一義的には、遺言者の意思を尊重し、遺言内容を実現することが職務の内容ですので、できる限りその方向で動かれることは、合理的な判断であると考えます。
また、見解の相違があるとことではありますが、遺言内容と異なる遺産分割協議をするには、遺言執行者の同意が必要とされていますので、それを理由として相続人を説得されるというのも、1つの合理的な方法であると思います。
よろしくお願い申し上げます。
その後動きがあり関連して質問させてください。
前回ML質問の後、相続人全員に集まっていただき、今回の相続について遺言が存在する旨とその内容のコピーを手渡しました。併せて、A,B及びDに対し「法律上は、相続開始のときから既遺言書の内容どおりにG及びE,Fに権利義務が移転しているので、そのことに口を出す権利はない。ただし、あなた方がそれでは不服だというのであれば、遺言の存在があることを知った本日から1年以内に遺留分の減殺請求をする権利はある」と告げました。
また、私が「相続人及び受遺者のG及びE,Fは親族間で揉めたくはないので均等に分割を主張されているが、遺言執行人の立場として、それでは被相続人の遺志に反すること及び遺言がある以上、相続人間の遺産分割協議であっても遺言執行者の承認が必要であること」も説明しました。
その反応は、遺言の内容に衝撃を受けたようで、しばらく声が出ませんでしたが、D(Cの弟、会社経営者)は、『相続財産の全てを相続分である4分の1ずつとすべき』、またA,B(Cの姉)は『Gが現に居住している土地・建物についてはやむを得ないが、その残り全ては相続分である4分の1ずつとすべき』との意見でした。
なお、A,Bについては、被相続人が遺言を書くような旨を事前に聞いていたようですが、それは、「土地・建物についてのみ」と思っていたとのことでした。
蛇足ですが、その会合は、被相続人の一周忌を控えた数週間前に行われ、事前の日程調整ではA,B及びDとも「参加」のところ、その会合の後「一周忌不参加」となりました。
G及びE,Fも『実の親の一周忌にも参列しないなんて、一円も上げたくない』と憤慨しているところ、最近Dより「法定相続分に近づけるべきとの考え」(具体的な金額の提示は、なし)と連絡があり、こちら側としては検討する余地もないとの立場であります。また、最終的には訴訟もやむなし、と考えておられます。
そこで、このような状況において、どのような方法が一番よい解決になるのか思案しております。
【質問4】
一般的には、今後どのように進めていくのでしょうか。
(一般論を踏まえた上で、先生にお世話にならざるを得ないような気がします)
【質問5】
相続人1名あたりの遺留分としては、1/2✕1/4(子4名)=1/8との理解でよいか。
【質問6】
遺留分の計算に際しても、特別受益に該当する財産があれば、持戻しをした上で個々の遺留分の計算をし、そこから特別受益分を差引くということは可能でしょうか。
現実問題として、被相続人の口座から引き出した「使途不明金」は恐らくA,B,Dの誰かが引き出しているものと推測するしかありませんが、それをこちらが主張することによって、相手の遺留分の主張額を少しでも下げさせられないかということです。
【質問7】
上述のような、遺留分の交渉となった場合、そのまま私が携わることは、弁護士法の「いわゆる非弁行為」に該当しないでしょうか。
具体的な財産の分配に関わることは、遺言執行人の職務範囲から外れる気がすることと、遺留分の主張の際に、これは非弁行為ではないかと脅されて(?)、遺留分主張の取引材料にされると嫌だなと考えております。
追伸
税理士法律研究会に参加させていただいております。
馴染みのない言葉や概念があり、勉強させていただいております。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。
1 【質問4】
>一般的には、今後どのように進めていくのでしょうか。
>(一般論を踏まえた上で、先生にお世話にならざるを得ないような気がします)
一般的には、遺言の内容通りの財産分配を行うということになります。
財産分配が終了すれば、遺言執行者としての職務は終了となり、その後A,B,Dが遺留分減殺請求をするかしないかは先方の自由なので、一旦その請求を待つということになるかと存じます。
仮に、遺留分減殺請求がなされたとすると、その後の権利義務関係の処理は、遺留分権利者であるA、B、Dと、遺贈や相続させる旨の遺言により財産を取得したCの妻、E、Fとの問題として、当事者間で処理するということになります。
2 【質問5】
>相続人1名あたりの遺留分としては、1/2✕1/4(子4名)=1/8との理解でよいか。
そのとおりです。
3 【質問6】
>遺留分の計算に際しても、特別受益に該当する財産があれば、持戻しをした上で個々の遺留分
>の計算をし、そこから特別受益分を差引くということは可能でしょうか。
>現実問題として、被相続人の口座から引き出した「使途不明金」は恐らくA,B,Dの誰かが
>引き出しているものと推測するしかありませんが、それをこちらが主張することによって、相
>手の遺留分の主張額を少しでも下げさせられないかということです。
はい。可能です。
その場合、特別受益に該当する財産を持ち戻して個々の遺留分を計算し、引き出しをした相続人の遺留分から特別受益分を差し引くことになります。
4 【質問7】
>上述のような、遺留分の交渉となった場合、そのまま私が携わることは、弁護士法の「いわゆ
>る非弁行為」に該当しないでしょうか。
>具体的な財産の分配に関わることは、遺言執行人の職務範囲から外れる気がすることと、遺留
>分の主張の際に、これは非弁行為ではないかと脅されて(?)、遺留分主張の取引材料にされ
>ると嫌だなと考えております。
遺言執行人の業務範囲は、その名の通り、遺言内容を執行することになりますので、一旦、遺言内容通りに、E,F,Gへの財産の分配を行えば、職務は終了となります。
その後、報酬をもらって、遺留分の交渉に携わることは非弁行為に該当することになります。紛争状態での非弁行為の場合、どこから刺されるかはわからないところが大きくなりますので、十分ご注意なさった方が良いかと思われます。報酬を得る目的がなければ、非弁行為にはあたりませんが、先生ご自身が紛争に巻き込まれることも多いのでご注意ください。
また、遺言執行者の立場として、特定の相続人に有利になるよう遺留分の交渉を行うことは、各相続人に対して中立公正でなければならないという遺言執行者の義務と矛盾し、問題があると思われます。
>追伸
>税理士法律研究会に参加させていただいております。
>馴染みのない言葉や概念があり、勉強させていただいております。
ありがとうございます。今後、できる限りわかりやすく解説させていただく所存でございますでの、是非、残りの回も宜しくお願い申し上げます。