労働法 医療法 所得税

国家資格保有者の法人設立

永吉先生

大変お世話になっております。

●●です。

下記案件ご教示ください。

前提

診療放射線技師の資格を持つA氏は数件の病院でアルバイトをしている。

質問

1、現在はアルバイトとして病院に勤務し雇用関係にあるが、雇用関係ではなく、いわゆる外注として契約することは可能か?

2、上記外注契約が可能な場合、A氏が法人を設立した場合、診療放射線技師のサービスを法人として提供することは可能か?

3、法人として提供することが不可能な場合、税理士と会計法人のように業務を明確に区分して、法人に一部業務を依頼することは可能か?

4、その他何か気を付けることがあれば教えてください。

以上です。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①~アルバイトを外注できるか

>前提
>診療放射線技師の資格を持つA氏は数件の病院でアルバイトをしている。
>現在はアルバイトとして病院に勤務し雇用関係にあるが、雇用関係ではなく、
>いわゆる外注として契約することは可能か?

病院を持つ医療法人とA氏との間で、「業務委託契約」を締結することにより、
ご指摘の「外注」の形式で契約すること自体は可能です。

ただし、ご質問がその契約が労働基準法上の労働契約に当たらない
ようにできるか?というご趣旨でしたら、別問題です。
こちらは、実際の業務実態により認定される評価の問題となります。
(論理的に一致しませんが、税務でいうところの給与所得と
事業所得の区別に似た話になります。)

業務内容がこれまでと全く同一で、実態は変わらず、
契約書だけ変更するとなると認定上は厳しいかと
思います。
(なお、釈迦に説法ですが、税務上の評価も実態判断となります。
契約書の名称が、業務委託だから雇用だからという理由で、
給与と外注費が区別されるわけではありません。)

なお、診療放射線技師法2条では、
「医師または歯科医師の指示の下に、放射線を人体に対して照射
することを業とする者をいう」とされていますので、
外注といえど医師の指示に従うことが必須になります。

2 ご質問②~診療放射線技師の独占業務を法人提供できるか?

>上記外注契約が可能な場合、A氏が法人を設立した場合、
>診療放射線技師のサービスを法人として提供することは可能か?

診療放射線技師の業務である、
医師等の指示の下に、放射線を人体に対して放射することは、
診療放射線技師法24条で、
診療放射線技師や医師等の独占業務とされていますので、

独占業務について、株式会社等でのサービス提供は
できないものと考えられます。

3 ご質問③~業務を区分して法人に業務委託できるか?

>法人として提供することが不可能な場合、税理士と会計法人のように業務を明確に区分して
>法人に一部業務を依頼することは可能か?

個人で受託し、その一部を株式会社に再委託する
という前提でよろしいでしょうか。

実際に医療機関から受託する業務によりますが、
理論上は、可能な部分はあります。

ただし、医療機関がその業務を委託をする場合、
独占業務以外についても、税理士と会計法人と異なり、
医療法等で再委託の可否やそもそもの委託先の
基準などが定められているものがあります
(医療法15条の3第1項・2項、医療法施行令4条の7)
ので、注意が必要です。

以下などが参考になるものと思います。
https://www.city.arakawa.tokyo.jp/kenko/hokeneisei/iryou/iryoutuchi_h30.files/20181030_byouintou_gyoumuitaku.pdf

なお、節税目的等だけで、受託業務の実態が法人で行えない業務
であるにも関わらず、契約書上だけで作成する(名目だけ区分する)という行為は、
法律の潜脱行為として違法になりますので、ご注意ください。

よろしくお願い申し上げます。