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一人親方の外注費扱いについて

永吉先生
税理士の●●です。
お世話になっております。

一人親方の外注費について

状況は
親会社が材料は提供していますが作業道具は自前です。
時間に拘束力はなく出来高(作業分)に応じた請求書を発行しています。
親会社の現場監督としての作業の指示はありますが、
それ以上管理監督されることはありません
本人が病気などで作業できない時は他の一人親方に作業を振ることになります。
以上のような状況で
雇用とみなされることがないかどうか
ご教示よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

ご質問のご趣旨としては、税務上、
外注費か給与かというところでよろしかった
でしょうか。
以下、その前提で回答します。

(もし、純粋に雇用契約か否か?または
労働基準法上の「労働者」に該当するか
否かというご質問でしたら、お手数ですが、
その旨、ご指摘いただければ幸いです。)

1 ご質問と回答の結論

>一人親方の外注費について
>雇用とみなされることがないかどうか

税務上、外注費なのか給与なのかの問題は、
必ずしも、雇用契約か否かの問題と一致しません。

下記の通り、最終的には、
実態の評価の問題になりますので、
ケースバイケースですが、
いただたい情報から状況を推測すると
外注費扱いで問題ないものと思います。

評価の過程が重要となりますので、
回答の理由も併せてご確認いただき、
実態と違いがないかも確認の上、
ご判断いただければと思います。

2 回答の理由

(1)外注費か給与かの判断について

税務上、
外注費なのか、給与なのかの問題は、
必ずしも、雇用契約か否かの問題と
一致しません。
(裁判例等も雇用類似の業務委託等を含む
とされています。)

裁判例から分析した関係性でいうと

・請負→外注費
・委任→グレーゾーン
・雇用→給与
ということはいえるかと思います。

最終的に、給与に当たるかは、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
①労務提供の態様の従属性
「従属性」
→「使用者の指揮監督に服して」、
「時間的・空間的な拘束を受けて働く」という労務提供の態様

②報酬受給の態様の非独立性
「非独立性」
→「自己の計算と危険によって行う」のではない
という報酬受給の態様
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

で判断され、最近では、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・①の従属性がある場合→給与

・①の従属性がないまたは微妙な場合

②の判断により
非独立的=給与
独立的=外注費
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

という図式で裁判例などでは、
判断されています(東京高裁平成25年10月23日等)。

(2)今回のケース

ア ①労務提供の態様の従属性

>時間に拘束力はなく
>親会社の現場監督としての作業の指示はありますが、
>それ以上管理監督されることはありません

親会社の現場監督としての作業指示が
どの程度のものなのかによりますが、

時間的拘束性がなく、
作業指示自体が、「こういうものを作成してくれ」

という程度のものであれば労務提供の従属性は
認められるものではないと思います。

イ ②報酬受給の態様の非独立性

>親会社が材料は提供していますが作業道具は自前です。

材料の提供の責任自体は、請負契約であったとしても、
どちらが負担するかは契約で定めるものであって、
材料の提供を親会社がしているからといって、
それのみで、独立性が否定されるものではないでしょう。

また、作業道具が自前という点は、
自己の仕事の完成という目的を達成する手段は、
自分で用意しているということで、
請負と認定される方向の事実であり、
独立性が認められる大きな事情かと思います。

>時間に拘束力はなく出来高(作業分)に応じた請求書を
>発行しています。

出来高(作業分)の意味するところが定かでない
点がありますが、
>時間に拘束力はなく
ということですので、おそらく何時間働いたからいくら
ということではなく、

作業により完成した何かを基準に報酬が決定
されているものかと思いますので、この点についても、
請負に近い類型の契約と評価できるでしょう。

こちらも、完成しなければ、報酬を得られないという
意味で、独立性が高いと判断できます。

>本人が病気などで作業できない時は
>他の一人親方に作業を振ることになります。

どのようことがあれば、
作業を振ることができるのかにも
よりますが、

これが、1人親方の判断で、作業を
誰かにお願いするのは自由ということであれば、

請負契約の典型的な性質ですので、
(雇用はもちろん、委任も原則、自由な
判断で、下請け等をすることはできません。)

独立的と評価して良いかなり大きな事情になります。

ウ まとめ

ご質問の事情のみからでは、
どのような意味(実態)での
前提なのかわかりかねるところが
ありましたが、上記のような意味
であれば、従属性も、非独立性もなく、
問題なく外注費と言えるでしょう。

よろしくお願い申し上げます。