部分払いの税務上の権利確定時期

＞契約書における「部分払」が、部分引渡しに該当し請求権が確定しているのか
＞教えて下さい。
＞気になるところは請求できる金額が10分の9以内であることと
＞部分払の請求が「できる」という記載になっているところです。

２　回答の理由

法人税法上の権利確定の考え方には
諸説あるものの、
一般的に判例・通説は、「無条件請求権説」によっている
とされています。
（実務上はここまで厳密に考えられているかは微妙ですが）

この無条件請求権説ですが、
法的に無条件に請求ができる部分に関して、
請求権が確定していると考えるものです。
（ですので、「できる」という記載になっている
からといって、権利確定していないということには
なりません。）

この権利確定については、
契約の内容（プロジェクト全体の設計）
や経緯などを含めた総合考慮になりますが、
いただいたご質問の情報から判断
すると下記のようになると思います。

＞(契約条項）
＞部分払の条項には以下の記載があります。
＞①受注者は、業務の完了前に、契約書に規定する一部業務が完了したときに、
＞当該部分に対応する契約金相当額の10分の9以内の額について部分払を
＞請求することができる。
＞②部分払を請求するときは、あらかじめ発注者に対して、中間成果品及び
＞契約金相当額契約書を提出のうえ、当該部分の検査を求めなければならい。
＞③受注者は検査合格の通知をうけたときは、遅滞なく当該中間成果品を
＞発注者に引き渡すものとする。

こちらの規定を合理的に解釈すると、
①②③の条件を満たした場合には、その時点で
一部成果品に対して、１０分の９を請求することが
無条件に可能ということになると考えられます。

そして、残り１０分の１については、
プロジェクト全体の業務が完了した時点で請求
することが可能となる
「停止条件付」の請求権という
ことになりますので、プロジェクト全体の業務（６次業務まで）
が完了した時点において、無条件に請求できる権利
と考えることになるでしょう。

ご指摘の
＞また、発注者の解除権の条項の中には
＞発注者は、前項の規定により本契約を解除した場合において、業務の出来高部分の
＞うち、検査を終了したものについては、引渡しを受けるものとし、当該引渡しを
＞受けたときは、当該引渡しを受けた出来高部分に相応する契約金額を支払わなければ
＞ならない。
＞前項の場合において、部分払の支払があったときは、部分払の額を前項の出来高部分
＞に相応する契約金額から控除する。

「前項の規定」が明らかではありませんが、
おそらく、「発注者側の問題・都合」による解除の場合には、

プロジェクト全体の業務を受注者が完了していなくても、
残り１０分の１の権利行使も可能という
趣旨の条項ではないかと思われます。

このような条項からも、原則として
プロジェクト全体の業務の完了が満額
（残り１／１０）の請求をするための
停止条件になっていると解釈することが合理的か
と思われます。

したがって、
ご質問の部分払いについては、

◯上記契約条項の要件が備わった時点で、
９／１０相当額の請求権が確定し、

◯プロジェクト全体（６次業務まで）の業務
が完了した時点に、
残り１／１０相当額が確定するという
ように厳密には解釈することになるかと
思います。

なお、他に特別な規定がなければ、
このような解釈になるかと思われますが、

例えば、部分払いの請求をした場合には、
プロジェクト全体の業務が完了したとしても、
９/１０しか請求できないとするような
条項がある場合には、別途考慮が必要かとも
思いますので、契約書をご確認いただければと
思います。

よろしくお願い申し上げます。