民法 その他

車購入のキャンセルの可否

今回は、お客様が車の購入予定で、契約されたのですが

諸事情によりキャンセルしようとしましたが、ディーラーから無理ですと言われたのですが、

営業の気持ちはわかりますが、法律的にどうなのでしょうか?

まだ車自体は、モデルチェンジがあるので販売されていません。

販売開始は10月半ばころで、契約は8月頃にされたようです。

どうなんでしょうか?

お教えください。

1 ご質問および回答の結論

>今回は、お客様が車の購入予定で、契約されたのですが
>諸事情によりキャンセルしようとしましたが、ディーラーから無理ですと言われたので>すが、営業の気持ちはわかりますが、法律的にどうなのでしょうか?
>まだ車自体は、モデルチェンジがあるので販売されていません。
>販売開始は10月半ばころで、契約は8月頃にされたようです。
>どうなんでしょうか?

※以下、車を購入する予約をされている段階ではなく、正式に契約をされている(契約書を交わされている)という前提でご回答します。

 法律上、契約を一方的に解除、取消等する根拠(詳細は、下記回答の理由(3)をご覧ください。)があれば、それを根拠に、キャンセルを主張することができます。
 そのような理由がない場合には、こちらの事情を再度説明して販売業者がキャンセルに応じてくれるよう要望するのが現実的な対応ですが、これに応じないということであれば、キャンセルすることは難しいと考えられます。

2 回答の理由
(1)回答の前提(契約の成立)

>販売開始は10月半ばころで、契約は8月頃にされたようです。

 この点について、購入するという予約をされているだけなのか、正式に契約をされた(契約書を交わされた)のかという点を今一度ご確認いただければと思います。ご質問の文面からすると、正式に契約をされたということかとは思いますが、まだ正式に契約はされていないということであれば、以下のご説明は当てはまりませんのでご注意下さい。

 以下、車を購入する契約を正式にされたという前提でご回答します。

(2)契約の効力

 いったん契約が成立すれば、当事者は、契約に従わなければならなくなります。法律や契約で認められている場合でなければ、一方的に解約を行うことは難しいです(相手が解約に応じて、合意解約するということであれば話は別です)。

(3)法律上、契約の解除・取消・無効を主張できる場合

 契約が成立した以上、一方的に解約できないのが原則ですが、以下のような場合には、法律上、解除や取消、契約の無効を主張することが認められています。

ア 特定商取引法によるクーリングオフ

 車の販売の方法が、「訪問販売」にあたるような場合には、特定商取引法により、クーリングオフ(理由を問わず一方的に解約できる。)の制度があります。ただ、車を「訪問販売」しているということは、あまり考えられないため、これは当てはまらないかと思われます。

イ 消費者契約法による契約の取消(消費者契約法4条)

 購入者が個人の方で、「消費者」にあたる場合、消費者契約法が適用されます。

 契約するかどうかを決定するために重要な事項について、販売業者がウソをついたり(不実告知)、ある事項について、こちらにとって一方的に利益になることしか言わず、不利益となることはわざと隠していた(不利益事実の不告知)ことにより、消費者に勘違いが生じてしまったという場合、契約を一方的に取り消すことができます(消費者契約法4条)。
 たとえば、販売業者が、車の品質や価格、代金の支払方法等について、ウソの説明をし、購入者がこれを信じてしまった場合などです。

ウ 錯誤による無効主張(民法95条)

 購入者側に、契約の重要な部分について「錯誤」(勘違い)があり、それがなければ契約をしなかっただろうという状況であれば、錯誤による契約の無効を主張できます(民法95条)。
 たとえば、価格を大幅に勘違いしていたとか、購入する車種を間違えていた場合などが典型でしょう。

エ 債務不履行に基づく解除(民法415条)

 販売業者が、契約で決められたことに違反した場合(債務不履行)、契約を一方的に解除することができます(民法415条)。
 たとえば、契約で決められた日までに、自動車が納品されないなどの場合です。

オ その他

 その他にも、法律上、一方的に契約を解除したり、取り消したりすることができる場合もあります。ですが、基本的に、相手に何らかの「落ち度」がある場合でないと、一方的に契約の効力を否定することは難しいです。
 相手に何らかの「落ち度」があり、こちら側に契約を守らせるのが酷だという場合に、法律上、一方的な解除、取消などの権利が認められているというのが、基本的な考え方です。

(4)現実的な対応

 上記(3)のような一方的に契約の効力を否定する理由がないという状況であれば、販売業者との合意解約の可能性を探るのが現実的な対応です。
 法律上の理由がない以上、強く主張することはできませんが、業者によっては、何回か要望すれば、応じてくれるケースもないわけではありません。それでも業者が応じない場合は、一方的にキャンセルすることは難しいと考えられます。

 よろしくお願い申し上げます。