民法 税理士賠償責任

顧問税理士の交代後の責任について

永吉先生

お世話になっております。税理士の●●です。

2月決算の医療法人の顧問先の事です。

個人から10年近くお付き合い頂いた顧問先ですが、2020年1月の中旬頃、突然、別の税理士事務所に1月から変更した旨を伝えられました。

そこで、2月が決算なので、私の方から「今度の2月決算の申告はどうしますか?」と尋ねとところ、「2020年2月の決算だけは私にやって欲しい」という回答でしたので、嫌々ですが決算申告を行いました。
3月には個人の給与所得の確定申告があることは例年通り知っていましたが、依頼されていない事もあり、当然、1月に顧問税理士になった税理士事務所がやるものだと思っています。

ところが、交代した税理士事務所は、「法人の決算をやって、個人の確定申告をやらないのは、私の落ち度だ」と言ってきたのです。

また、確定申告書の資料も送っている、と言ってますが、受け取っていません。

既に次の顧問税理士が存在している事、法人決算もする義務は無いと思いますが、途中では交代する事務所が大変かと思い、「2月決算だけは」という事で行った事ですが、

それでも私の落ち度になりますか?

宜しくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>3月には個人の給与所得の確定申告があることは例年通り知っていましたが、依頼されていな
>い事もあり、当然、1月に顧問税理士になった税理士事務所がやるものだと思っています。
>ところが、交代した税理士事務所は、「法人の決算をやって、個人の確定申告をやらないの
>は、私の落ち度だ」と言ってきたのです。
>また、確定申告書の資料も送っている、と言ってますが、受け取っていません。

2 回答

最終的な厳密な結論としては、
先生と代表個人の間で、所得税申告をすることにつき、
これまでの事実経緯等から、
合意があったかという点と、仮に合意がなかったとしても、
対象年の所得税申告は行わない旨伝える注意義務があったかの
評価によるところになりますので、確実にどちらとはいえません。

たしかに10年以上継続していたことや法人申告(4月末申告と思料します)
も先生が受任されていることから、今回の所得税申告も、当然そのような内容の黙示の
合意があったとされる可能性や注意義務があったとされる可能性がないでもありません。

しかし、税理士交代の経緯と、あくまでも個人の申告は法人とは
別個のものであることや
>「また、確定申告書の資料も送っている、と言ってますが、受け取っていません。

という事情からすると、このような黙示の合意があったとは
されない可能性が高いと思います。

注意義務については、
>「2020年2月の決算だけは私にやって欲しい」という回答

があったとのことですが、これがメールなどで残っており、
先生に有利に読み取れるかどうか等の事情によるところですが、
既に税理士がいたという点からすると注意義務違反が認定される
可能性自体は高くないと思います。

なお、注意義務に関していうと今期はコロナの影響で、現状でも個別延長で提出すれば
よいと思いますので、先生としては所得税申告の依頼を受けていないので、
新しい税理士に行ってもらうよう代表者に伝えればよいかと思います。

よろしくお願い申し上げます。