役員報酬 会社法 法人税

期中就任の取締役の報酬

永吉先生

いつもお世話になっております。

(前提)
・A株式会社は、2020/6の定時総会直後の取締役会において、各取締役の2020/7からの報酬の決定について、代表取締役Xに一任する決議を行い、同日代表取締役Xが各取締役の報酬額を決定した(過去の株主総会において、取締役の報酬枠及びその範囲内で取締役会に一任する旨の決議はしている)。
・2020/10/26に、臨時総会により、新たに取締役Y(もともとA社の従業員)を選任する予定。

(質問)
①取締役Yの報酬については、代表取締役Xに決定させることを予定していますが、この場合においても、改めて取締役会において「代表取締役Xに、取締役Yの報酬の決定を一任する」旨の決議が必要となりますでしょうか?

②取締役Yは、2020/10/26に選任・就任となります。
税法上、役員報酬の日割計算は予定されていないという理解ですので、月額報酬を満額支払わざるを得ないと思っています。
その場合、取締役Yに対する役員報酬の支払開始月は、2020/10又は2020/11いずれでも、会社法上問題ないという理解で正しいでしょうか(税務上も問題ないという理解ですが、可能であれば、税務上問題ないかどうかについてもコメントいただけますと幸いです。)?

③差支えない範囲でご教示頂ければ大変助かるのですが、永吉先生のご経験上、上記のような場合、2020/10又は2020/11いずれの月から役員報酬を支払っているケースの方が多いイメージでしょうか?

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜新任取締役の報酬の決定

>①取締役Yの報酬については、代表取締役Xに決定させることを予定していますが、この場合
>においても、改めて取締役会において「代表取締役Xに、取締役Yの報酬の決定を一任する」
>旨の決議が必要となりますでしょうか?

はい。必要となるものと考えられます。

>各取締役の2020/7からの報酬の決定について、代表取締役Xに一任する決議
は、あくまでもその当時の取締役を前提にした一任であり、
こちらの取締役会から代表取締役への委任は、個別の取締役ごとに着目した
ものであると考えられるからです。

一方で、株主総会の総額決議の方は、お手盛りにより株主に被害が生じない
ようにすることがその趣旨ですので、総額の報酬枠内であれば、再度の
決議は必要ないものと考えられます。

2 ご質問②〜新任の取締役の報酬について

>取締役Yは、2020/10/26に選任・就任となります。
>その場合、取締役Yに対する役員報酬の支払開始月は、2020/10又は2020/11いずれでも、会
>社法上問題ないという理解で正しいでしょうか(税務上も問題ないという理解ですが、可能
>であれば、税務上問題ないかどうかについてもコメントいただけますと幸いです。)?

会社法上は、代表取締役の決定と取締役Yとの合意が、
10月支払分の役員報酬は0、11月支払分から正規の月額とすることも
問題ないですし、10月支払分から正規の月額とすることも問題はありません。
また、10月分を11月に支払うという合意でも問題ありません。
(この場合、退任の際に1ヶ月分ズレます。)

税務上は、10月分を11月に支払うという合意であったんだ
という意味で、10月、11月どちらで支払ったとしても、
問題ないというのは、後者の支払方法(時期)の問題として
捉えているという意味かと思います。
(そうでない場合は、期中の増額改訂と捉えられますので。)

従業員が役員となるケースで、10月分の従業員給与と役員報酬の重複を
避けたいという意味ですと、
10月26日の株主総会で、11月1日からYが取締役に就任する形で決議する
方法が良いかと思います。

つまり、10月分は従業員給与満額で、11月分から役員報酬
とする形です。

3 ご質問③〜月中の就任の役員報酬について

>③差支えない範囲でご教示頂ければ大変助かるのですが、永吉先生のご経験上、上記のよう
>な場合、2020/10又は2020/11いずれの月から役員報酬を支払っているケースの方が多いイメー
>ジでしょうか?

就任後に10月中にその支給日が到来するのであれば、
10月支給分から支払うことが多いように思います。
(他の役員の支払方法にもよるところです。)

ただ、従業員から取締役になるケースでは重複分が
生じるため、

株主総会決議で11月1日からの就任となるように
調整する方法をおすすめしています。

よろしくお願い申し上げます。