【相続人からの依頼内容】
平成30年譲渡所得税の税額を考慮したうえで、各相続人への分配額を試算して欲し
い
【前提】
・相続発生日 平成7年3月14日
・相続人11名
・相続人間(二男及び長男の息子)で分割協議が整わなかったため、平成30年5月ま
で未分割。
・平成30年において、相続人の1名(依頼者)が代表で分割を取りまとめ
協議書を作成。(相続人全員の捺印及び不動産登記済み)
【分割協議書の内容】
・A土地については、二男及び三男の息子が1/2ずつ相続(二男及び三男の息子が同一
の土地に引続き居住のため)
・墓地については長男の息子が相続
・その他不動産については二女(依頼人)が相続後売却し、
一切の費用を控除したうえで法定相続割合に応じて各相続人に分配する。
【相続人間(依頼人?)の認識】
全ての不動産について、法定相続割合に応じて各相続人に分配
【質問事項】
分割協議書と相続人間の認識にズレがある状況で、
以下のような相続人間の認識に従って売却代金を分配した場合どのようなリスクがあ
りますでしょうか。
また、分割協議書と異なる分配のため売却代金分配の際に分割終了の旨の確認書等を
各相続人より徴収するなどの対策は
考えていますが、効果はあるでしょうか。
その他、分配額の試算をするため税理士の責任について、
「あくまで(案)であり具体的な金額決定については当事者間の合意をもって決定す
る」等の書類は防衛策として
有効でしょうか。
具体的には以下のような計算を考えています。
売却代金△経費=1200
A土地評価額(便宜上長男が取得) 300
仮に相続人が3名とした場合
長男(1200÷3)-200=200
二男(1200÷3)+100=500
二女(1200÷3)+100=500
よろしくお願い致します。
前提で回答します。
>分割協議書と相続人間の認識にズレがある状況で、
>以下のような相続人間の認識に従って売却代金を分配した場合どのようなリスクがあ
>りますでしょうか。
1 分割協議の有効性
まず、分割協議についてですが、
こちらは、分割協議について法的に錯誤などの
無効原因がない限り、有効なものになります。
そして、錯誤の要件として、錯誤に陥った者(他の相続人)
に「重過失」がある場合は、錯誤が認められない
のですが、協議書を見て相続人全員が捺印して
いるということですと、
分割協議書のとおりの遺産分割は有効なものと思われます。
(詐欺や強迫のようなものがある場合は別として)
2 遺産分割のやり直しについて
分割協議書どおりの分割協議が有効なものとしても、
民事上は、改めて相続人全員で合意をして、
分割協議をやり直すことは可能です。
しかし、税務上は、
遺産分割のやり直しになりますので、
(参考:http://www.kfs.go.jp/service/JP/70/17/index.html)
結局のところ、
>具体的には以下のような計算を考えています。
>売却代金△経費=1200
>A土地評価額(便宜上長男が取得) 300
>仮に相続人が3名とした場合
>長男(1200÷3)-200=200
>二男(1200÷3)+100=500
>二女(1200÷3)+100=500
譲渡所得の計算は、長男、二男、二女で
法定相続分により同一になるというところで、
協議書とは異なる部分については
長男から二男、二女への贈与となります。
>平成30年譲渡所得税の税額を考慮したうえで、各相続人への分配額を試算して欲し
>い
このご依頼では、
協議書を前提にして、税額を計算するしかないでしょうし、
仮に相続人の認識による分配をするのであれば、
贈与税の問題含め税理士の先生として、
説明義務はあるかと思います。
なお、譲渡までに
遺産分割協議のやり直しを行えば、
税務署にはバレないということもあるとは思いますが、
税理士の先生が積極的に関与することは
おすすめできません。
よろしくお願い申し上げます。