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事前確定届出給与と取締役への臨時賞与

事前確定届出給与について教えてください。

3月決算、6月株主総会の会社で
7月と12月に賞与を支給することを
株主総会で決議しました。
事前確定届出給与の要件は満たしています。

ただし、その年度の業績によっては4月に賞与を
支給したいと考えています。

税法上では4月に支給した分については
届出がないので損金不算入になると思いますが、
他の法律等で決議がない支給について
問題になることはあるのでしょうか。

以上よろしくお願いいたします。

1 ご質問

>他の法律等で決議がない支給について
>問題になることはあるのでしょうか。

2 回答

取締役の賞与支給に関して問題となるのは、
会社法上の規制です。

(1)取締役の賞与に関する会社法上の規制

取締役の賞与の支給には、
原則として、株主総会決議、
または、定款の定めにより、
その金額を決定することが必要です。
(会社法361条1項1号)

定款の定めはないと思いますので、
株主総会決議で定めなければ、
会社法上の要件を満たさないということになります。

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会社法第361条
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
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(2)株主総会で取締役報酬の総額を定めて委任している場合

ただ、判例上、株主総会で取締役全員の
報酬総額(の上限)を定めて、
個別の取締役の報酬額(月額報酬・賞与)の決定は、
取締役会(または取締役過半数の決定)に
一任することもできるとされています。

仮にこのようなパターンで行われている会社であれば、
取締役の賞与について、
取締役会(または取締役過半数の決定)で
決めることができますので、株主総会までは
行わなくてよい可能性があります。

(3)違反の場合の効果

いずれにしても、上記のような決議を経ずに
支給された賞与は、会社法361条1項1号違反と
なってしまいます。

その場合、支給された賞与は無効となり、
不当利得として、支給を受けた取締役は、
会社に対して、同額の返還義務を負うことになります。

ただし、以下のような場合には、有効な賞与の
支給となる例外もありますので、ご確認ください。

ア 事後的な株主総会の承認

事後的に、賞与の支給を株主総会(臨時総会
などで可)で追認することもでき、
追認された場合には、
さかのぼって支給が有効になると
解されています(最高裁平成17年2月15日)。

この規制の趣旨が、お手盛りの
防止になるので、事後的にも承認を
得られば十分と考えられているからです。

イ 実質的に株主全員の同意がある場合

また、上記の趣旨から
正式な株主総会決議の手続がとられていないとしても、
実質的に、株主全員の同意がある場合には、
賞与支給は有効となると考えられています。
(東京地裁平成3年12月26日など)

例えば、賞与の受給者が100%株主であれば、
支給について、株主全員の同意があると評価
できますので、

支給時点で有効なものとなります。

よろしくお願い申し上げます。