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一方の会社の帳簿に計上されていないグループ会社間の債権放棄について

【前提】
・法人Bは、帳簿上、法人Aへの未払金が5億円計上されている。

・法人Aは、帳簿上、法人Bからの未収金は全く計上されていない。

・法人A・Bは、個人を頂点とする兄弟会社で、株主は100%同族関係者です。

・正確な経緯は不明だが、約15年前に民事再生を行ったときにズレたものと思われる。

・今回、法人A、Bともに解散・清算をすることになった。

【質問】
誰(AまたはB)が、どのような手続きをすれば、
法人A・B間の貸借を精算することができるでしょうか。

宜しくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>・法人Bは、帳簿上、法人Aへの未払金が5億円計上されている。
>・法人Aは、帳簿上、法人Bからの未収金は全く計上されていない。
>・法人A・Bは、個人を頂点とする兄弟会社で、株主は100%同族関係者です。
>・正確な経緯は不明だが、約15年前に民事再生を行ったときにズレたものと思われる。
>・今回、法人A、Bともに解散・清算をすることになった。
>誰(AまたはB)が、どのような手続きをすれば、
>法人A・B間の貸借を精算することができるでしょうか。

最終的なゴールとしては、法人A及び法人Bが
通常清算するというところかと思いますので、
・法人Aは債務超過ではない(債権者がいても返済が可能)
・法人BもAへの未払金5億円がなければ債務超過ではない(債権者がいても返済が可能)
という前提で回答します。

2 回答

厳密に正確な処理というと15年前の事情で債権・債務が
本当に存在しているのかという点がわからないとなんとも
いえないのですが、そこが調査してもわからないということだと
思いますので、正攻法では難しいですが、
ある程度方法を決め打ちする必要があるかと思います。

(1)法務的な視点

法務の視点からすると、

法人Aの全株主同意の下、
法人Aと法人Bとの以下の内容を含んだ確認書を作成します。
(全員同意を取るのは株主から取締役への損害賠償を避ける
ためです。)

・法人Aの法人Bに対する債権は存在しないことを確認すること
・仮に存在したとしても、債権放棄すること

具体的な状況などにより嘘にならない程度の表現
にすることになりますが、以下のような形になるかと
思います。

====================================
○法人A 及び法人Bは、平成○年○月頃の民事再生により、
法人Aの法人Bに対する〇〇金債権が消滅したことを確認する。
○仮に存在したとしても、前記債権を法人Aは放棄するものとする。
====================================

この方法により、法人AのBSはそのまま、
法人Bの未払金5億円を消した上で、
通常清算をするという方法です。

(2)税務的な視点

問題は、税務的に法人Bへの債務消滅益の
課税関係はどうなるのかという点かと思います。

仮に、債務免除益が立ったとしても、期限切れ繰越欠損金
等で調整できるのであれば、問題はないと思うのですが、
そうでない場合の課税関係です。

仮に15年前に消滅していた債務(未払金)が計上されている
とすると、本来その時点で債務消滅益となっていたもの
を法人Bは計上していなかったということとなるかと思います。

15年前の処理ですので、税務上の除斥期間にかかっている
のですが、除斥期間を経過した過去の処理をどのように扱うのかは
見解の対立があるところです。(私の書籍である「民事・税務上の時効解釈と実務」の
184頁〜200頁で解説しています。)

端的にいうと、
○課税庁が更正をできなくなった以上、過去に更正済みのものとして、
扱うという考え方
○除斥期間の経過は、当事業年度の課税標準または税額等を今後
変動させることはないという点について保証され、未是正の状態を
前提にした後年度の課税を許容する考え方

があります。一般的には、一応、実務は後者の考え方に立つと
言われています。この考え方を前提にすると、課税庁としては、
仮に債権が不存在であるとしても、債務消滅益が生じたものとして
更正ができるということになってしまいます。

ただ、本当に存在していない債権にまで、課税してくるかという
と微妙なところかとは思います(考え方に争いはありますし、
最高裁などがある領域ではないので、見解の相違ではあるでしょう。)。

そこにかけるのであれば、
債権がそもそも存在していないことを
主張とある程度の合理的な立証をすることができれば
この問題はクリアできるのかもしれません。
(同族間ということもあるので、ハードルは高いかとは思います。。。)

その場合は、「(1)」の仮に債権が存在したとしても債権放棄する旨は
書かなくてもよいかと思います。

(3)破産手続きの活用

仮に、目的が法人Bの法人格の消滅にあるとすると、
法人Bについては、破産手続きに乗せてしまうという
のも1つの方法かとは思います。

(4)その他

一応、念のためですが、同族会社間の
債権放棄の場合、Aの株主からBの株主への
利益移転があったとして、みなし贈与(相続税9条)の
適用があるというような見解もあるようです。

個人的には、相続税法9条の「当該利益を受けさせた者」
はあくまでも、法人Aなので、それは相続税法の解釈として
難しいのではないかと思いますが。

よろしくお願い申し上げます。

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