民法 税理士法 税理士賠償責任

粉飾への対応について

永吉先生

いつもお世話になっております。
ご相談させてください。

7月に金融機関からの紹介で顧問契約を結んだ顧問先についてです。

過去の決算報告書と勘定科目内訳書を確認したところ、事前に金融機関から頂いたものと、税務申告の際に税務署に提出したものの数字が全く違いました。

現在、10期目の法人で、6期目からの決算書を金融機関から頂きましたが、6期目では既に粉飾が行われていました。

まだこのことに気付いたばっかりで、社長へのヒアリングはこれからとなりますが、社長へのヒアリングの前に、このような粉飾行為が行われた場合、それが発覚した後の金融機関にたいする法律的な知識と今後税理士としてどのように対応すべきか、事前に知っておきたくてご相談させて頂きました。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>現在、10期目の法人で、6期目からの決算書を金融機関から頂きましたが、6期目では既に粉
>飾が行われていました。

>まだこのことに気付いたばっかりで、社長へのヒアリングはこれからとなりますが、社長へ?
>のヒアリングの前に、このような粉飾行為が行われた場合、それが発覚した後の金融機関に
>たいする法律的な知識と今後税理士としてどのように対応すべきか、事前に知っておきたくて
>ご相談させて頂きました。

2 回答

そうですね。程度問題にもよりますが、

>現在、10期目の法人で、6期目からの決算書を金融機関から頂きましたが、6期目では既に粉
>飾が行われていました。

>事前に金融機関から頂いたものと、
>税務申告の際に税務署に提出したものの数字が全く違いました。

ということですと、この顧問先さんの行為は、
金融機関への詐欺罪等(刑法246条1項)にあたりうる行為です。

また、民事的には契約上、借入金の一括返済等を迫られる
期限の利益喪失事由になっているのが通常ですし、
詐欺による契約の取消事由(民法96条1項)などにも
なり得ます。

税理士の先生のお立場としては、

適正な決算書に基づき申告をしており、
勝手に顧問先さんが、粉飾した決算書を
金融機関に出していたということであれば、
通常、責任は負いません。

一方、税理士の先生が作成及びサポートした粉飾した
決算書等を金融機関等が信じて融資等を行った場合には、
金融機関から不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。

今回の件では、前者かと思いますが、
金融機関から資料を受け取っているため
金融機関も、税理士の先生が
粉飾の事実を認識している状況
を知っていると思いますので、
返済が貸倒れ等すると
金融機関側からすると損害賠償請求を
してくる可能性自体はあるかなとは思います。

一方で、先生としては、守秘義務との関係上、
この事実を、金融機関に伝えるということは
できないので、

やるべきこととしては、社長に事案を
ヒアリングし、犯罪行為に該当しうるので、
やめるよう伝える等していれば、最終的な責任を問われる
可能性は低いとは思います。

あとは、今後トラブルに巻き込まれるリスクをどう考えるか
やその顧問先さんをサポートしていきたいか、
事務所の経営方針などによりますが、
顧問契約を終了するという選択肢をとることも
考えなければならないかとは思います。

今後の資金繰り等の相談にも正面か答えられなかったり等
すると思いますし、色々と精神的なストレスや対応に悩まさせる
ことが多いと思いますので。

なお、粉飾を前提にお話ししていますが、
逆に税額を下げるために、税務申告書で利用
した決算書や勘定科目内訳書側が適正ではないという
可能性もあるとは思いますので、その場合は、それを
前提に申告してしまうと、
不真正な税務書類の作成等(税理士法47条)
にあたってしまうため、その点もご確認いただいた
方が良いかと思います。

よろしくお願い申し上げます。