(前提)
・平成31年1月1日、甲が死亡。
・甲の相続人は、長男乙、次男丙、三男丁の3名。
・公正証書遺言あり。
→A銀行2,000万円は長男乙へ、B銀行1,000万円は次男、三男で1/2ずつ。
→その他不動産、証券等資産あり(全体は概ね法定相続分通り)
→平成29年の所得税が1,500万円。当該税金が多額であったため、
遺言書には「B銀行の金融資産を換価し、この支払いに充てることとする」と記載あり。
→実際はA銀行から支払われている。
(質問)
この前提で1,500万円の取り扱いをどのようにするべきでしょうか。
遺言に置いてはB銀行を換価してとあるので、1,000万円を上限として精算するべきなのでしょうか。
それとも、1,000万円を精算した上で、差額500万円は次男、三男から長男へ別途支払うべきでしょうか。
宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>遺言書には「B銀行の金融資産を換価し、この支払いに充てることとする」と記載あり。
>→実際はA銀行から支払われている。
>この前提で1,500万円の取り扱いをどのようにするべきでしょうか。
>遺言に置いてはB銀行を換価してとあるので、1,000万円を上限として精算するべきなのでし>ょうか。
>それとも、1,000万円を精算した上で、差額500万円は次男、三男から長男へ別途支払うべき>でしょうか。
2 回答
(1)甲の生前にA銀行から支払われている場合
この場合ですが、
最終的には、甲の生前の行動の意味の合理的
解釈の問題となりますが、
遺言者甲がA銀行から生前に支払ったということであれば、
その行為が、以下の民法1023条第2項の遺言との
抵触行為に該当し、
>A銀行2,000万円は長男乙
のうち、1,500万円部分
>B銀行の金融資産を換価し、この支払いに充てることとする
部分
について、
甲が生前に遺言の内容を理解しつつ
このような行為をしたということで、
撤回されたという認定になる可能性が
高いかと思います。
もちろん、行為の意味の事実認定と
評価になりますので、反論の余地はあるところかとは思います。
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(前の遺言と後の遺言との抵触等)
民法第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
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(2)甲の死亡後に乙が任意にA銀行から支払った場合
こちらのケースでは、
少なくとも
本来は、B銀行から支払うべき金額(1000万円)
については、乙は任意に弁済したことになりますので、
少なくともB銀行から支払われるべき1000万円
については、次男と長男に1/2(500万円)ずつ
求償することができるものと考えられます。
差額500万円については、
「B銀行の金融資産を換価し、この支払いに充てることとする」
の解釈として、
相続時のB銀行の残高を超える部分を
次男・三男に負わせるものとは読めません。
他の遺言の記載事項にもよりますが、
500万円は、相続させる旨の遺言による
相続分の指定があると評価できる場合には、
その割合に応じて、
>(全体は概ね法定相続分通り)
ということですので、概ね法定相続分
通りに乙・丙・丁、3名で負担することに
なるかと存じます。
事実認定と評価を含む問題もありますので、
より厳密にどちらか判断が必要という場合や
争いが生じる場合には、遺言書と合わせて、
無料相談をご利用いただければ、幸いです。
よろしくお願い申し上げます。