いつもお世話になっております。
税理士の●●と申します。
M&A(株式売却)に伴う損害賠償について
(前提)
・個人株主甲は第三者乙へ自己が100%所有する法人AをM&Aにより
その株式の全部を2年前に売却した。
・株式売却後、甲はこの会社の経営には一切タッチしていない。
・今年になって、顧問の税理士より、法人Aの過去の会計処理に問題があるかも
しれないと指摘を受けた。(外注費処理について給与認定の可能性がある)
・譲渡された法人Aについて、上記指摘された部分の経理を同じように処理している。
(甲の顧問税理士が引き続き担当しているので同じ処理をしているとの事)
・現在において税務調査の予定はない。
・当時の株式譲渡契約書において下記の条項があります。
(税務調査への協力、租税公課の負担)
甲は、乙に対して、本件株式の譲渡前における納税申告を適切に行っていることを
確約し、本件株式譲渡前の期間を対象にした税務調査の際にはこれに協力する。
2 甲は、本件株式譲渡前について賦課される租税公課(不納付加算税、重加算税
等を含む)をすべて負担し、乙から当該租税公課相当額の請求があった場合には
14日以内に指定した口座に振り込む方法により支払う。
(質問)
・甲は、上記条項の「納税申告を適切に行っていることを確約し」との部分を
心配しております。
・甲は、将来法人Aに税務調査があった場合に株式譲渡「前」の部分の修正による
追加納税があった場合には負担することについては理解しています。
しかし、上記の「納税申告を適切に行っていることを確約し」の部分があることにより
譲渡後も同じ処理をしていた。と言われ、その責任を損害賠償請求(譲渡後の
2年分の追加納税額)されることを心配しております。
譲渡「前」の処理部分についての損害賠償請求は仕方ないとしても
上記の文言により譲渡「後」の処理を責任追及されることはないと考えますが
如何でしょうか?
(もちろん相手方が請求してくる可能性はあると思いますが、
法律上負う責任はないと考えますが如何でしょうか?)
宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>・甲は、上記条項の「納税申告を適切に行っていることを確約し」との部分を
>心配しております。
>・甲は、将来法人Aに税務調査があった場合に株式譲渡「前」の部分の修正による
>追加納税があった場合には負担することについては理解しています。
>しかし、上記の「納税申告を適切に行っていることを確約し」の部分があることにより
>譲渡後も同じ処理をしていた。と言われ、その責任を損害賠償請求(譲渡後の
>2年分の追加納税額)されることを心配しております。
>譲渡「前」の処理部分についての損害賠償請求は仕方ないとしても
>上記の文言により譲渡「後」の処理を責任追及されることはないと考えますが
>如何でしょうか?
>(もちろん相手方が請求してくる可能性はあると思いますが、
>法律上負う責任はないと考えますが如何でしょうか?)
2 回答
はい。先生のご認識のとおりと考えます。
譲渡前の期間処理については契約上明確に定められていますので、
甲の責任は生じえるものと思われますが、
株式譲渡後の期間については、乙が完全に法人Aを支配
しているわけですから、いただいた条項を確認しましたが、
「納税申告を適切に行っていることを確約し」との
文言があったからといって、法的に甲に損害賠償責任が
生じるかというと、生じないでしょう。その点はご安心
いただいて良いと存じます。
よろしくお願い申し上げます。