医療法人が運営する介護老人保健施設の保証金について
教えてください。
この老健では、入所時に保証金として10万円を預かっており、
退所する際に、未収金等があればそれを精算して、
利用者へ返金するようになっています。
平成10年に入所して、2,3年で退所した利用者がいました。
その家族から20年以上経った今頃になって、当時の10万円の保証書がでてきたので
10万円返金してもらいたいとの連絡がありました。
医療法人側としては、退所時(平成12年頃)に保証書を紛失したということで
書面に記載していただいて精算したと記憶していますが、
当時の書類は残っていません。
医療法人としては、全て精算できたと言うことで 約20年間なんの連絡も入れなく
営業をしていていただけなんですが・・・
医療法人側には証拠となる書類は残っておらず、保証書だけが存在しています。
この場合、保証金10万円の返金はしなければならないのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問と回答の結論
>医療法人側には証拠となる書類は残っておらず、
>保証書だけが存在しています。
>この場合、保証金10万円の返金はしなければならないのでしょうか。
本件では、返金に応じる必要はないでしょう。
2 理由
>医療法人側としては、退所時(平成12年頃)に保証書を紛失したということで
>書面に記載していただいて精算したと記憶していますが、
>当時の書類は残っていません。
ということですと、確かに裁判等になった際に、
返金したことを証明できるかというと疑問が残ります。
ただし、仮にその点が証明できないとしても、
現行民法上、債権は権利を行使できる日から、
10年間が経過した場合には、時効が完成します。
>この老健では、入所時に保証金として10万円を預かっており、
>退所する際に、未収金等があればそれを精算して、
>利用者へ返金するようになっています。
>平成10年に入所して、2,3年で退所した利用者がいました。
ということであれば、
当該利用者の退所時点から、保証金返還請求ができると思われるので、
平成22年から平成23年ごろにかけて、
消滅時効が完成していると思われます。
時効を援用すれば、裁判となっても返金に応じる必要はないでしょう。
なお、今回は特に問題ないと思いますが、
注意点としては、債務の承認をしてしまうと
時効の完成を主張できなくなってしまいます
(最判昭和41年4月20日)ので、
そのようなことはしないようにお気をつけください。
先方への対応としては、単純に時効の話だけ
すると、返還すべきものを時効で逃げたという
ようなことを言われると心外かと思いますので、
すでに精算済みであることを主に説明し、
それでもしつこいようであれば、
どっちにしても時効で消滅している旨を
説明すれば良いでしょう。
よろしくお願い申し上げます。