質問1
公正証書遺言書に
長女****が平成13年5月ころに自宅を購入するために金融機関から借受けた金員
につき、遺言者が資金援助するための金員として、金1,500万円から、この遺言が
効力を生ずるまでに、遺言者が援助した頭金・毎月の資金を差し引いた金員
と記載がありました。
内容を確認したところ、長女が家を購入する際に長女は被相続人から贈与を受けた
のではなく、長女は借入金をして家を購入しました。
当然に、毎月の銀行の返済があるのですが、長女には収入がないため、その返済金を
毎月、贈与していたということです。
この自宅資金のための毎月の贈与は特別受益に該当するのでしょうか?
質問2
同じ案件ですが、長女は被相続人より前に亡くなられていました。
長女には子がいるため代襲相続人として長女の子1と子2が被相続人の代襲相続人に
なります。
上記質問1が特別受益に該当した場合には、代襲相続人(被相続人から見たら孫)についても
母が受けた特別受益は孫相続人の特別受益に該当すると考えてよろしいでしょうか?
参考資料
②被代襲者に対する特別受益
被代襲者(被相続人の子や兄弟姉妹のうち、被相続人の死亡以前に相続放棄以外の理由で相続権を失っていた人)に対する特別受益は、
贈与時点で被代襲者が推定相続人だった場合には代襲相続人の相続分算定の際に考慮されることになります。
(1)ご質問
>質問1
>内容を確認したところ、長女が家を購入する際に長女は被相続人から贈与を受けた
>のではなく、長女は借入金をして家を購入しました。
>当然に、毎月の銀行の返済があるのですが、長女には収入がないため、その返済金を
>毎月、贈与していたということです。
>この自宅資金のための毎月の贈与は特別受益に該当するのでしょうか?
(2)回答
特別受益(「生計の資本としての贈与」(民法903条1項))
に当たるかどうかは、
被相続人の資産状況、贈与の動機・目的、贈与額などの
諸事情を考慮して、判断することとなります。
居住用不動産の贈与は、「生計の資本としての贈与」の
典型例として挙げられます。
今回は、居住用不動産自体の贈与ではありませんが、
その購入資金の贈与(購入資金支払いのための
借入金の返済にあてる資金の贈与ということですが、
購入資金自体の贈与と同視できると思われます。)
ということなので、
「贈与の動機・目的」としては、
特別受益になりうるものと思われます。
あとは金額ですが、
贈与の合計金額が相当程度あるということであれば、
特別受益に該当する可能性が高いといえるでしょう。
2 ご質問②
(1)ご質問
>質問2
>同じ案件ですが、長女は被相続人より前に亡くなられていました。
>長女には子がいるため代襲相続人として長女の子1と子2が被相続人の代襲相続人に
>なります。
>上記質問1が特別受益に該当した場合には、代襲相続人(被相続人から見たら孫)についても
>母が受けた特別受益は孫相続人の特別受益に該当すると考えてよろしいでしょうか?
(2)回答
被代襲者(母親)が、特別受益を受けていた場合に、
代襲相続人(子1と子2)が特別受益を受けていたものとして、
持ち戻しを行う必要があるかどうかにつき、
一応、見解は分かれています。
先生ご指摘のとおり、
特別受益としての持ち戻しを肯定する説が、
実務上は通説です。
ただ、これを否定する裁判例(鹿児島家裁審判昭和44年6月25日)や、
被代襲者の特別受益について代襲相続人が現実に利益を受けている場合
(今回のケースでは、子1・子2が自宅を相続するなどして、
取得している場合が当たるでしょうか。)
にのみ肯定する裁判例(徳島家裁審判昭和52年3月14日)もあります。
ですので、肯定説以外は絶対に認められない
というほどでもないように思います。
もし、否定説の方がご依頼者にとって有利ということであれば、
認められる見通しは厳しいかとは思いますが、
主張自体は行ってもよいレベルかと思います。
よろしくお願い申し上げます。