相続 相続税

被相続人が負担した農協の建物更生共済は相続財産か

前提
①契約者 長男
②被共済者 長男
③建物(目的物)の所有者
 被相続人1/2
 長男1/2
④払込額(年30万×4回)
 被相続人1/2
 長男1/2
⑤負担者 被相続人の通帳により全額を支払う。

質問
この場合、支払の都度贈与とみるか、解約返戻金相当額を相続財産とみるか
教えて下さい。

なお、前提として、
農協の建物更生共済の約款の規定等により結論が異なる可能性も
ありますので、より厳密な個別の約款等を見ながらの
ご相談ということであれば、無料相談をご利用ください。

1 ご質問および回答の結論

>この場合、支払の都度贈与とみるか、解約返戻金相当額を相続財産とみるか
>教えて下さい。

被相続人が払い込んだ保険料の金額について
民法上、以下のいずれかになると考えられます。
その判断基準については、下記回答の理由をご参照ください。

①被相続人から長男への贈与

または

②被相続人から長男へ求償権が発生し、その求償権が相続財産になる。

いずれにしても、
建物更生共済の解約返戻金相当額自体が相続財産になる
という結論ではないと考えられます。

なお、相続税との関係では、
相続税法3条1項3号の税務上のみなし相続財産規定に
ご注意ください。

2 回答の理由

(1)保険契約の財産性

保険契約は、それが継続している限りにおいて、
民法上は、契約自体の財産的価値は、
契約者に帰属すると評価されると考られます。

保険契約をしているのは契約者であり、
また、途中で解約した場合の解約返戻金の
請求も契約者が行うことができるからです。
(約款で異なる定めがなされていれば、
これと結論が異なる可能性はあります。)

ですので、今回の事例だと、
保険契約自体は契約者である長男の財産と
評価されると考えられます。

(2)被相続人が保険料を支払っていたことの評価

保険料の支払義務があるのは契約者である長男であり、
これを被相続人が支払っていた場合、

本来、契約に基づいて保険料を支払うべき長男にかわり、
被相続人が支払っていたということになるので、
民法上は、第三者弁済(民法474条)と評価されることになります。

第三者弁済を行った場合、弁済をした人(被相続人)から、
本来支払うべきだった人(長男)に対して
弁済した額の求償権が発生します。

もっとも、被相続人が保険料を支払う際に、
その保険料を長男にあげる(または第三者弁済により
生じる求償権を放棄する)という趣旨で
支払っていたのだとすると、
被相続人から長男への求償権は発生しない(または、
発生はするが放棄された)ことになります。

この場合には、支払った保険料相当額を、
被相続人が長男に贈与したという評価になるかと思われます。

このうちのどちらになるかは、
被相続人が保険料を支払うことについて、
被相続人と長男との間にどのようなやりとりがあったかなどの
個別の事情によるところはありますが、
ざっくり言うと、
保険料相当額をあげるという趣旨だったのか、
かわりに支払うけど後で返してもらうという趣旨だったのか
が分かれ目になるかと思います。

(3)相続財産について

上記のうち、被相続人から長男に対して
求償権が発生していた場合には、
その求償権自体が、被相続人の相続財産になります。

なお、(1)のとおり、保険契約自体は、
契約者である長男の財産と考えられますので、
解約返戻金相当額自体が、被相続人の被相続財産となると
いうことはないと考えられます。

なお、相続税との関係では、
相続税法3条1項3号の税務上のみなし相続財産の
規定にご注意ください。

よろしくお願い申し上げます。