いつもお忙しい中ご教示いただきまして誠にありがとうございます。
最近では、民事信託の注目度がかなり高くなってきており、金融機関でも
民事信託の組成までするようになってきております。
そこで、次の二点、ご教示いただきたいです。
➀ 高齢で体が不自由な方(判断能力には問題なし)の預貯金の管理方法として
生前の委任契約をするべきか、または民事信託をすべきか。どちらがより
有効か。
( 先日公証人に相談したら、最近では委任契約があれば信託は必要ないもの
まで信託契約にしているケースがあるとおっしゃっておりました )
➁ 民事信託について、子供がいなく配偶者と兄弟が相続人の場合、例えば妻
方の甥、姪などを受託者として信託を組むことにリスクはございますか?
ざっくりとした稚拙な質問で恐縮ですが、よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜民事信託等
>➀ 高齢で体が不自由な方(判断能力には問題なし)の預貯金の管理方法として
>生前の委任契約をするべきか、または民事信託をすべきか。どちらがより
>有効か。
純粋に預貯金だけの管理であれば、
財産管理委任契約でも良いかと思います。
ご年齢等にもよりますが、財産管理委任契約の場合、
本人への意思確認などが必要となりますので、
認知症等となってしまうと問題が生じます。
したがって、あわせて任意後見契約を
締結して、公正証書で作成しておいた方が良いでしょう。
なお、財産管理委任契約への対応は、
各金融機関により運用がまちまちですので、
その辺りは、利用予定の金融機関などに問い合わせ
た上で、何ができてできないのかを確認し、
実際の管理してほしい方法(金額等含む)に適合しているかは
調査の上行った方が良いでしょう。
あとは、他の財産との兼ね合いですね。
例えば、将来の不動産の売却等も含むのであれば、
信託を組成し、それと同時(ある意味ついでに)預貯金なども含める等の
対応をするということもありえます。
>(先日公証人に相談したら、最近では委任契約があれば信託は
>必要ないものまで信託契約にしているケースがあるとおっしゃっておりました )
これはそのとおりかと思います。
(前のご質問でもご指摘すればよかったです。失礼しました。)
ただ、事案によるので、どこまで公証人の方が状況を理解
されているのかはわかりません。
財産管理契約も、どこまで対応が可能かという点が
金融機関等の第三者の運用に依存するところがありますので、
どちらが良いかという点は、どのような財産管理や処分を
想定しているかや財産関係によるところです。
なお、任された者の裁量自体は信託の方が広いでしょう。
2 ご質問②〜リスクについて
>民事信託について、子供がいなく配偶者と兄弟が相続人の場合、例えば妻
>方の甥、姪などを受託者として信託を組むことにリスクはございますか?
まずは、甥、姪などを受託者にすることというよりも
信託自体のリスクですが、受託者が信用に値する人物でなければ、
人に財産管理を任せるわけですから、何か問題が生じることの
リスク自体はありますね。これは、上記の財産管理委任契約等でも同様です。
あとは、将来の相続人がいる場合、
財産の使い込みがあった等で、損害賠償請求されるケースはありますね。
これも、他人に管理を任せる以上は一定程度生じます。
信託の場合は、その裁量は比較的広い一方で、
財産管理委任契約の場合、本人への意思確認(の証拠が)なく
財産を処分し、本人に損害が生じたなどで、
相続の際に損害賠償請求を受けたりということも想定できます。
この辺りは、相続人の人柄や関係性にもよる
ところですので、特別「甥、姪」だから生じる問題とまでは
いえないかと思います。
誰かの財産を管理する以上、付随するリスクかと思われます。
よろしくお願い申し上げます。