いつも大変お世話になっております。
表題の件、ご教示頂ければ幸いです。
【前提】
健康保険法第百六十一条(保険料の負担及び納付義務)の規定により
事業主は保険料額の二分の一を負担することとなっておりますが、
国民健康保険法にはそのような規定は存在しません。
一方で、例えば関東信越税理士国民健康保険組合においては
『税理士国保では、勤務税理士及び職員が負担する保険料の半額は、
事業主又は税理士法人の負担となります。』
という記載があり、規約によって本人負担と事業主負担を定めています。
http://www.ka-z-kokuho.or.jp/insurance.html
http://ka-z-kokuho.or.jp/pdf/h3009_kiyaku.pdf
また、規約によって本人負担と事業主負担を定めていない国保組合も存在するようです。
【質問1】
従業員本人のみに納付義務のある
・国民年金保険料
・市区町村が保険者である国民健康保険料(税)
を、事業主が任意に負担した場合
又は
健康保険料のうち、事業主の負担義務をこえて
任意に被用者の健康保険料を負担した場合
には、「法定福利費」「福利厚生費」いずれにも該当せず被用者に
対する給与として取り扱うべきと考えますが、正しいでしょうか。
【質問2】
関東信越税理士国民健康保険組合の場合、事業主の負担が規約によって
定められていますが、このような場合における事業主負担部分は
法律に準ずるものとして「法定福利費」に該当すると考えてよろしいでしょうか。
【質問3】
国保組合の規約によって、事業主の負担が定められていない場合において、
事業主が任意に国保組合の保険料を負担した場合には、
たとえそれが保険料額の二分の一であったとしても【質問1】
のとおり被用者に対する給与とすべきでしょうか。
以上です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜国民健康保険等の事業主負担について
>従業員本人のみに納付義務のある
>・国民年金保険料
>・市区町村が保険者である国民健康保険料(税)
>を、事業主が任意に負担した場合
> 又は こえて
>任意に被用者の健康保険料を負担した場合
>には、「法定福利費」「福利厚生費」い
>健康保険料のうち、事業主の負担義務をずれにも該当せず被用者に
>対する給与として取り扱うべきと考えますが、正しいでしょうか。
はい。先生のご見解の通りかと存じます。
(1)経済的利益に該当するか
以下のU R Lの回答要旨の「逆にいえば」
以降についても、事業主の負担を超える場合には、
所得税法上の経済的利益に該当するとしています。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/30.htm
(2)福利厚生費に該当するか
以下の所得税基本通達36ー32(1)も、
被保険者が負担すべき保険料について、
月300円以下負担であれば、経済的利益
の課税をしない運用をしていますが、
300円以下であったとしても、特定の者
のみを対象として負担している場合は、経済的利益
に該当するとしています。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
直接的に福利厚生費に該当するかしないかという形で
記載されているわけではないですが、
従業員等全体に関して実施しても、月300円を
超えるものは経済的利益として課税対象としている
ことからすると、福利厚生費ではなく、給与課税の
対象としていると考えているものでしょう。
福利厚生費の定義からすると、本来被保険者が
負担するものであり、それを事業主が負担するのは
月300円を超える場合には、
社会通念上妥当でない支出と評価されるということなのでしょう。
「社会通念上」というのは評価の問題と
なるので、争うということも考えられなくは
ないですが、上記通達等からすると難しいかな
というところです。
2 ご質問②〜各国民健康保険組合規定による事業主負担について
>関東信越税理士国民健康保険組合の場合、事業主の負担が規約によって
>定められていますが、このような場合における事業主負担部分は
>法律に準ずるものとして「法定福利費」に該当すると考えてよろしいでしょうか。
はい。その通りかと考えます。
上記でも掲載した以下のU R Lの回答事例では、
健康保険法162条による規約の変更が根拠としています。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/30.htm
===============================
(健康保険組合の保険料の負担割合の特例)
健康保険法第162条 健康保険組合は、前条第一項の規定にかかわらず、規約で定めるところにより、事業主の負担すべき一般保険料額又は介護保険料額の負担の割合を増加することができる。
===============================
この規約は、厚生労働大臣の認可を受けた上でなければ
効力は生じません(健康保険法14条2項、同法16条等)。
一方で、国民健康保険法では、健康保険法第162条の
ような直接的な規定はないものの、
国民健康保険法においても、規約で、「保険料に関する事項」について、
記載することが必須であり(国民健康保険法18条8号)、
その規約も都道府県知事の認可を受けなければ効力は生じません
(国民健康保険法17条2項、同法27条2項)。
直接的な規定はないものの、法律で定められた
認可庁の認可の下、効力が生じるものですから、
国民健康保険組合の規約で事業主負担が定められている
場合には、「法定福利費」として扱うという先生の
ご見解が適切だと考えます。
3 ご質問③〜事業主の国民健康保険等の任意負担
>国保組合の規約によって、事業主の負担が定められていない場合において、
>事業主が任意に国保組合の保険料を負担した場合には、
>たとえそれが保険料額の二分の一であったとしても【質問1】
>のとおり被用者に対する給与とすべきでしょうか。
ご質問①の回答のとおりかと存じます。
健康保険法に基づく組合が事業主1/2負担という理由で、
国保組合の1/2を事業主が負担しても社会通常上、相当な支出
だろと言いたくなるところですし、そのような考えもあり得ると
は思いますが、
弊社も設立当初、東京都弁護士国保組合(規約上事業主負担なし)
を利用し、1/2を事務所で負担していましたが、
給与としないとリスク負うのが社員であることなどから、
結局、健康保険法に基づく健康保険組合に変更しました。
よろしくお願い申し上げます。