お世話になります。
表題の件につき、以下質問させてください。
■前提(一時払い終身保険)
1.契約時
契約者:父
被保険者:長男
死亡保険金受取人:父
→ ここで父に相続発生すれば、父の本来財産
→ 上記の場合、遺産分割協議の対象となる
2.名義変更後
これを以下のように名義変更します(父は認知症ではない)。
契約者:長男
被保険者:長男
死亡保険金受取人:長男の子
→ ここで父の相続が発生すれば、父のみなし相続財産
■質問
上記前提2において、父の相続が発生した場合、遺産分割協議の対象とならないという理解でよいでしょうか。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>■前提(一時払い終身保険)
>1.契約時
>契約者:父
>被保険者:長男
>死亡保険金受取人:父
>→ ここで父に相続発生すれば、父の本来財産
>→ 上記の場合、遺産分割協議の対象となる
>2.名義変更後
>これを以下のように名義変更します(父は認知症ではない)。
>契約者:長男
>被保険者:長男
>死亡保険金受取人:長男の子
>→ ここで父の相続が発生すれば、父のみなし相続財産
>■質問
>上記前提2において、父の相続が発生した場合、遺産分割協議の対象とならないという理解
>でよいでしょうか。
2 回答
(1)遺産分割の対象となるのか?
まず、ご質問の遺産分割の対象となるのか否か
という点については、
父の生前に契約上の地位及び受取人の地位を移転している以上、
保険契約に付随する権利関係は、相続人の共有財産にはならず、
遺産分割の対象にはなりません(遺産分割は遺産共有を解消する
ためのものであるため)。
(2)特別受益該当性
ただし、民法903条の特別受益として各相続人の
相続分の計算上、持戻しの対象となるのかについては、
別途考える必要があります。
契約者父、被保険者父の保険契約の受取人の変更については、
原則として特別受益にならないというはご存知の通りです。
しかし、上記のケースでは、契約上の地位(解約返戻金を
受け取る地位等)を無償で譲り受けたということになると
特別受益とされる「贈与」に該当するという可能性はあります。
税務上は、個人個人の場合、
解約返戻金を受け取った時に贈与課税とされることも
あるようですが、
その根拠は理論上は明確ではありません
(保険契約の複雑性に起因しているものとは思います。)。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/14/05.htm
民法上も、裁判例等でもこのあたりは、
実は明確なものがありませんが、
長男以外に弁護士がついたとすると、
無償で、保険契約上の地位の移転を受けたのであれば、
特別受益として主張するかと思います。
(多くの場合、その点を考慮しつつ、
和解するという流れなので、表に出にくい。)
これまで父が支払っていた保険料がある
ため、解約返戻金等を受け取る地位が移転すると
も考えられるので、これを無償で取得したとなると
裁判所も簡単に排斥できない部分は残るでしょう。
保険契約者の地位については、
東京地裁平成23年5月31日において相続の対象
となる財産であることが真正面から認められて
いるため、無償の地位の移転を贈与とはしない
というのは、なかなか理論的には厳しいように
思います。
もちろん、保険契約上の地位の財産評価を
どのようにするのかは難しい問題がありますが、
1つ解約返戻金額がポイントにはなると思います。
よろしくお願い申し上げます。