税理士が監査役になる場合はたまにあると思います。
1)税理士という専門知識を期待されて監査役になった場合、とくに別個の契約をしたような場合でなければ、一般通常の人が監査役になるのと比べて監査役としての業務の過失というのは重く見られるのでしょうか?
2)責任限定契約を会社と結ぶ場合、税務や経理の専門家であることによって、この限定契約が無効となるような解釈がなされる余地はありますでしょうか?
3)漠然としたことで申し訳ありませんが、一般的に税理士が非公開会社の監査役となる場合に起こり得る法的なトラブル事例とその回避方法などありましたらお教えください。
よろしくおねがいいたします。
>1)税理士という専門知識を期待されて監査役になった場合、とくに別個の契約をしたよう
>な場合でなければ、一般通常の人が監査役になるのと比べて監査役としての業務の過失とい
>うのは重く見られるのでしょうか?
監査役の注意義務違反の程度は、
総合的な事実認定と評価の問題になります。
確かに、会社としては、
税理士という専門的な能力を
有していることを期待して、監査役の
就任をお願いしている面は
あります。
ただ、法律の建付では、
税理士の先生は租税に関する専門家
ですので、
監査役の業務である
会社法その他会社の業務執行の適法性や
会計監査(もちろんお詳しいですが)について、
特段重い責任を負わされるかというと
そうとまでは言えないかと思います。
2 ご質問②
>2)責任限定契約を会社と結ぶ場合、税務や経理の専門家であることによって、
>この限定契約が無効となるような解釈がなされる余地はありますでしょうか?
それはないと思います。
ただし、
責任限定契約の適用範囲は、
「善意でかつ重大な過失ないとき」
になりますので、
業務懈怠の内容と税理士の先生の専門性が
あれば、明らかに発見でき処置すべきだった
として、適用範囲外となることはあるでしょう。
(契約が無効になるのではなく、重過失の認定の
中で考慮されうる。)
3 ご質問③
>3)漠然としたことで申し訳ありませんが、一般的に税理士が非公開会社の監査役となる場
>合に起こり得る法的なトラブル事例とその回避方法などありましたらお教えください。
(1)法的なトラブル等
まず、
監査役は取締役役を監督・監視する立場にあります。
監査役になるのみであれば、あまり問題は生じないのですが、
例えば、同時に顧問税理士でもあるようなケースですと
顧問税理士の立場としては、代表取締役の意見を最大限
尊重する立場にはありますので、監督・監視し、指摘が
事実上しにくいというケースでご相談をいただいたことが
あります。
また、これは監査役となった税理士の解任に
「正当な事由」があるかという点に関する
裁判例(東京高判昭和58年4月28日)
ですが、
当該税理士自ら行った税務処理に誤りがあった
という理由で、そのミスを理由に解任は正当なものである
とされているものがありますので、そういう意味では、
税理士としてのミスが監査役の地位などに強く
影響を及ぼすことがあるかと思います。
その他、会計士の先生が監査役の場合で、
代表取締役が不正に資金を流出させるおそれが
あったケースで、社外監査役として、反対意見書など
を提出をしていましたが、
当該代表の解職や取締役解任決議を目的とする
株主総会の招集を勧告する義務などが
あったとされ、善管注意義務違反があった
されたものもあります(大阪地裁平成25年12月26日)
ので、会計士兼税理士の先生のケースですと
裁判所はより厳しいかなとは思います。
ただ、このケースでも、責任限定契約があり、
「重過失」まではないとされています。
(2)回避策
回避策としては、役員である以上責任は
負ってしまうというところはありますが、
上記のように責任限定契約を締結する
ことや、
非公開会社であれば、「会計監査」(適法性
監査を含まない)に
限定することが可能ですので、
業務範囲を限定するということに
なるでしょう。
弁護士が、監査役などに
就任する際には、上記のような
利益相反的な側面もありますので、
顧問弁護士などの掛け持ちは
しないことが一般的かと思います。
ただ、税理士の先生はされている
ケースも多い印象です。
あとは、顧問税理士であったとしても、
監査役として、その代表に疑わしい行動が
あれば、厳しく対処するということは必要になると思います。
よろしくお願い申し上げます