クーリングオフへの対応

１　ご質問
インターネット上で商品を販売する（いわゆるEコマース）場合の商品の返品について
法律的に線引きじゃないですが、そのようなものはあるのでしょうか？
期間内ならすべて返金しなければならないのでしょうか？

インターネットで単価30万円程度の商材を販売
というのは、インターネットやメールマガジン等webの仕組みを利用して、勧誘し、申込みを受けているということで、
お客様を個別に訪問して商材を販売していたり、電話で勧誘して販売しているということはないという前提でよろしいでしょうか。

その前提で以下回答させていただきます（もし、訪問して販売等しているということでしたら、追加でご質問下さい。）

２　回答

（１）結論
　インターネットでの販売の場合には、利用規約等に何も記載がなければ、商品を販売先（以下、「買主」といいます。）が受け取った時から８日以内の返品には応じなければなりません。
　しかし、一般のクーリング・オフとは異なり、これは、利用規約等に特約を定めておくことで、返品に応じない、または、応じるとしても期間や条件を販売する側で設定することができます。

（２）理由
　
ア　インターネット取引についてのいわゆる「クーリングオフ」制度の適用
　
　まず、クーリング・オフ制度は、ご存知の通り、「特定商取引に関する法律」（以下、「特商法」といいます。）に定められています。
　いわゆるクーリング・オフとは、一定期間内であれば「無条件」で、一方的に契約を解除できる制度です。これに反する特約（例えば、クーリングオフは適用しない等）は無効となります。
　ですので、クーリングオフの適用がある取引であれば、もちろんその期間内であれば「返品」できることになります。
　
　しかし、インターネットによる商品の販売等の取引は、特商法上の「通信販売」に該当して、いわゆるクーリング・オフの適用はありません。クーリングオフは、訪問による販売や電話で勧誘した場合等に適用になります。

イ　クーリングオフ制度と類似の制度の適用
　
　ただし、「通信販売」には、クーリング・オフと似て非なる制度として、「法定返品権」（特商法１５条の２）という制度の適用があります。
　
　この制度は、「商品」の引き渡しがあった時点から８日間、買主が返品を要求できるというクーリング・オフのような制度です。
　しかし、クーリングオフとの決定的な違いとして、特約等で、買主の返品する権利を排除（返品は認めない。）又は制限（たとえば、返品は商品を受け取った時から３日以内）をすることが可能です。

　なお、商品にもよりますが、買主の購買意欲との関係で、必ずしも返品を認めないとすることが良いこととは言い切れないと思いますので、その辺りは顧問先様にご検討いただければと思います。

ウ　具体的な方法　

　実際には、商品を販売するウェブページ中、利用規約又は特定商取引法に基づく表示等の中に
　
①　返品を認めるか否か
【例：お客様都合による返品・返金には応じませんのでご了承下さい。】
②　返品を認める場合にはそれが可能である期間等の条件
【例：商品到着後３日間に限り、お客様都合による返品が可能です。】
③　返品に必要な郵送料の負担の有無
【例：返品送料・返金手数料につきましては、お客様負担となります。】　
　を記載して下さい。
　
　その際に、商品販売ページに直接記載する場合、利用規約や特定商取引法の表示へのリンクを貼る場合には、申込みボタンの近くに記載していただくか、リンクを申込みボタンの近くに貼っていただく必要があります。
　
　買主が申込みをする際、あまりに目に止まりにくいところにあると、無効となるおそれがありますのでご注意下さい。
　
　申込みボタンから見える範囲・見える文字の大きさでリンクを貼ってあるかどうかが、一つの目安となりますので、ご確認下さい。

　なお、この特約は、あくまでも、買主都合の返品・返金を認めるかどうかの問題を規律するものであり、取引の対象となった商品やサービスについてそもそも欠陥があったり、買主がそもそも勘違いをして購入してしまった（錯誤）等の場合には、他の制度によって契約の無効や解除等が認められる場合がありますので、ご注意下さい。

よろしくお願い申し上げます。