ある任意団体の総会(100名ほど参加)で、
決算書の末尾に記載している監査報告文の後に、
監事直筆の署名と認印を押印したものをコピーして配付したところ、
ある参加者から「直筆の署名押印は個人情報だから、配付する資料には、
監事の氏名を印字するだけにすべきではないか」
との意見が出ました。
確かに、上場企業の総会通知に添えられている監査報告書には、
印字された氏名に「㊞」と印刷されているものが多いようですが、
限られた者しか参加しない任意団体の総会で、「個人情報だから」
という理由には疑問を感じております。
個人情報保護法の対象となる情報に、署名押印は含まれるのでしょうか?
よろしくお願いします
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問と回答の結論
>ある任意団体の総会(100名ほど参加)で、
>決算書の末尾に記載している監査報告文の後に、
>監事直筆の署名と認印を押印したものをコピーして配付したところ、
>ある参加者から「直筆の署名押印は個人情報だから、配付する資料には、
>監事の氏名を印字するだけにすべきではないか」との意見が出ました。
>限られた者しか参加しない任意団体の総会で、「個人情報だから」
>という理由には疑問を感じております。
>個人情報保護法の対象となる情報に、署名押印は含まれるのでしょうか?
結論としては、署名か記名か等で、
個人情報保護法の対象になるか否かや
個人情報保護法違反かどうかが異なるものではありません。
偽造などに利用されるおそれもあることから、
倫理的な意味で、上場企業のように印字された氏名に「㊞」
とすべきという意見であれば、間違ったものではありませんが、
先生のご指摘のとおり、
>「個人情報だから」
という理由はずれているのかなとは思います。
2 回答の理由
(1)個人情報保護法との関係
個人情報保護法にいう「個人情報」とは、原則として
「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等・・・により
特定の個人を識別することができるもの
(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を
識別することができることとなるものを含む)」(個人情報保護法2条1項1号)
のことをいいます。
署名された情報等(氏名)は、個人情報に該当するものと
思われますが、それは記名(印字された氏名)であったとしても同様です。
(個人が特定されるという意味では変わらないからです。)。
ただし、監査報告文などについては、総会で公開される
ことが前提になされていることと思われますし、
本人(監事)がその前提で署名押印している以上、
本人の同意のある利用目的の範囲内の利用として、
個人情報保護法違反にはならないものと考えられます。
なお、いわゆる「第三者提供」の問題についての
対象は、「個人データ」に関するものになり、
今回は関係がないと思われますので、割愛します。
(2)上場企業等の措置
>確かに、上場企業の総会通知に添えられている監査報告書には、
>印字された氏名に「㊞」と印刷されているものが多い
こちらについては、個人情報保護法の問題ではなく、
署名や印影が偽造などに利用されるおそれもあるという
ところで、倫理的な意味で、そのように取り扱われて
いることが多いというものです。
よろしくお願い申し上げます。