税理士法 税理士賠償責任

税理士賠償責任と税理士に財産がない場合

永吉先生

いつもお世話になっております。

元顧問先が、税務ミスにより過大な納税を強いられたとして、
当時関与していた税理士に対し損害賠償請求を起こしました。
税理士は100%ミスを認めましたが、賠償額を支払う財産を持っておりません。

そこでご質問ですが、
①差し押さえる財産が全くなければ、それでおしまいでしょうか?
②賠償金を支払えないという事実をもって、税理士として懲戒処分、
資格はく奪ということになるのでしょうか?

基本的な質問で恐縮ですが
よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>元顧問先が、税務ミスにより過大な納税を強いられたとして、
>当時関与していた税理士に対し損害賠償請求を起こしました。
>税理士は100%ミスを認めましたが、賠償額を支払う財産を持っておりません。

>①差し押さえる財産が全くなければ、それでおしまいでしょうか?
>②賠償金を支払えないという事実をもって、税理士として懲戒処分、
>資格はく奪ということになるのでしょうか?

2 回答

>①差し押さえる財産が全くなければ、それでおしまいでしょうか?

基本的にはないものは回収できないので、
例えば、税理士業務の報酬口座等を特定して、
差押えをしたり等の方法を探ることになります。

制度的には、債権者も破産申立てが
可能ですので、お金があるのに支払っていない
ということであれば、こちらを利用して
回収を図るという方法もあるでしょう。

ただ、一方で、本当に財産がない場合には、
破産手続きによると、将来税理士が得る
報酬等を原資として、回収できなくなります。

また、債権者が破産申立をする際には、
裁判所に数十万円から百万円程度の予納金を
納める必要があり、債務者の財産がないケースでは、
この予納金も返ってこないので、債権を回収できないだけではなく、
新たな負担を負うリスクもあります。

したがって、債権者による破産申立ては、
あまり利用されないのが実態かと思います。

>②賠償金を支払えないという事実をもって、税理士として懲戒処分、
>資格はく奪ということになるのでしょうか?

現状では、賠償金を払えないことを直接の理由として、
懲戒処分等はなされていないように思います。
(もちろん、要件としては、不真正な税務書類の作成や
信用失墜行為等を根拠に懲戒自体は法的にはできるのでしょうが、
これは財務大臣の裁量処分になりますが、賠償金を払えない
という理由では実際に行われてはいないように思います。
財産隠し等の事情があればわかりませんが。)

一方で、上記の破産手続開始の決定を受けると
復権を受けるまでは、税理士資格を失います(税理士法4条2号)。

なので、放置しても税理士が続けられるということは
ないですが、

一般的に上記の通り、破産されても、賠償金の回収が
困難となるだけということもあるので、

むしろ、税理士を続けてもらって、分割でも良いので、
支払ってもらうように合意や和解をするケースが多いと思います。

よろしくお願い申し上げます。