お世話になっております。
表題につき、ご教授ください。
合同会社の社員数5名うち、代表社員1名
業種は建設業で社員全員が職人です。
取引先は1社で、当該取引先の役員から会社を
設立するよう指導されたとのことで す。
今後も職人さんを社員として増員していく方針です。
この場合、税務上役員として取り扱われる社員は全員でよろしいのでしょうか。
それとも、経営従事等の実質判定が必要でしょうか。
必要である場合、具体的要件をお教え頂けますでしょうか。
よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>合同会社の社員数5名 うち、代表社員1名
>この場合、税務上役員として取り扱われる社員は全員でよろしいのでしょうか。
>それとも、経営従事等の実質判定が必要でしょうか。
>必要である場合、具体的要件をお教え頂けますでしょうか。
2 回答
(1)税務上の役員判定について
合同会社においては、定款に業務執行社員を特定の社員に
限る旨を定めない限り、社員全員が合同会社の業務執行を行う権限を
持つこととなります(会社法590条1項)。
確かに、法人税法2条15号の役員の定義では、
合同会社の業務執行社員が形式的に「役員」にあたる
とはしていません(施行令でも、使用人兼務役員になれない
旨が定められるのみ(法人税法34条6項、同施行令71条1項3号))
ので、理論上は、
「法人の使用人(省略)以外の者でその法人の経営に従事しているもの」
(法人税法施行令7条1号)
と認定できる必要があります。
ただし、上記の通り、合同会社の業務執行社員であれば、
業務執行の権限を有するため、
役員にあたらないというのは難しいかと思います。
それを踏まえて、TAX ANSWER等
も業務執行社員であれば、「役員」にあたる
としているものと思われます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5200.htm
確かに、裁決・裁判例等では、
「経営に従事していた」か否かを実質的に
判断していますが、
例
http://www.kfs.go.jp/service/JP/102/09/index.html
これらは、法的(形式的)には経営に参画する権限は
ないが、実際は経営に従事していたケースで争われて
おり、上記の通り、経営に参画する権限をそもそも
有している業務執行社員を「役員」に当たらないと
見ることは極めて難しいのではないかと思います。
したがって、
>税務上役員として取り扱われる社員は全員でよろしいのでしょうか。
そういうことになるかと思います。
なお、定款で、業務執行権のない社員
とすることも可能です。
(2)法務リスクについて
>業種は建設業で社員全員が職人です。
>取引先は1社で、当該取引先の役員から会社を設立するよう指導されたとのことで
>す。
>今後も職人さんを社員として増員していく方針です。
この形態で会社設立は、法務リスクがあまりに高い
ように思います
まず、新たに職人さんを社員として
増員する場合には定款変更を行う必要がありますが、
合同会社における定款の変更には、原則として全ての
社員の同意が必要となります(会社法637条)。
したがって、全社員5名のうち1名でも反対した場合には、
新たな職人さんを社員として増員することができなく
なるリスクが伴います。
また、合同会社の業務における意思決定は、
社員(業務執行社員)の過半数によって行うことになるため、
社員の人数を追加していった場合には、会社としての意思決定が
難航することになります(会社法590条2項)。
現在は、合同会社の社員5名のうち、
代表社員の1名が中心となって、会社の意思決定を行っている
と思いますが、社員が増加していった場合には、
社員が二極化して意思決定ができなくなるという
事態も想定されます。
さらに、税務上は、上記の通りかと思いますが、
労働法上は、形式的には取締役の体をとっていても
実質的には、労働者であったとして、
残業代の請求や深夜労働規制などの
労働者の権利が認められることがあります。
もちろん、ケースバイケースですが、
特に今回のように多数の役員が存在している
ケースでは、形式的に役員の形式をとっていた
のみであるとして、労働法の適用を認める
裁判例が多いです。
(京都地判平成27年7月31日
東京地判平成24年5月16日)
このような形態で進める場合、後々トラブルになる
可能性は比較的高いのではないかと思います。
税務上の「役員」の規制の趣旨と
労働法の趣旨が異なるため、この部分では、
別々の判断とされるというのはおかしい
ことではありません。
仮にこのような形態をとられるとすると、
目的に即した厳密な定款規定(報酬等も含む)
の作成や実態管理をしていく必要があるかと思いますが、
今後のことを考えるとあまり、
おすすめできないかと思います。
法人をもう少し、小単位で作る等
の工夫をしても良いと思います。
よろしくお願い申し上げます。