お世話になります。税理士の落合といいます。
未公開株式の買取請求について質問があります。
被相続人Aに相続が発生して、
相続人は子Bが1人のみです。
Aが所有していた未公開会社甲社の株式を、
Bが引き継ぐことになりました。
被相続人Aは、持ち株割合は12%で、
甲社の代表者のきょうだいに当たり、
筆頭株主グループに属するため、原則的評価方法となります。
また、子Bも甲社株式を5%保有しています。
甲社は「株式保有特定会社」に該当します。
被相続人Aが所有していた甲社株式の評価額は、
10億円程度になるため、
手元資金では納税ができません。
また、Aは不動産も数億円所有していたため、
物納も優先順位からはできません。
Aが所有していた株式を、
甲社に買い取ってもらうことを考えています。
以下、質問です。
1.甲社への買取請求は可能でしょうか?
2.可能な場合、相続税評価額での買取りは可能でしょうか?
話し合いになるとは思いますが、
相続人としては相続税評価額での買取りを、
強く要求できるものでしょうか?
3.Aが所有していた株式の全株を買取請求することは可能ですか?
以上、よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜甲社への買取請求について
>Aが所有していた株式を、
>甲社に買い取ってもらうことを考えています。
>甲社への買取請求は可能でしょうか?
通常の株式であると、現状でBは、
買取を請求(買取を甲社に法的に義務付ける請求)をすることができません。
なお、可能性は低いと思いますが、買取請求権付株式(種類株式)であれば
請求をすることができます。
その他、買取請求ができる場合とすると、
Bが誰か(譲受人が必要です。)
に株式譲渡することの承認請求を甲社にし、
それを甲社が不承認とする場合には、
甲社または甲者が指定する者に株式の買取りを
請求することができるというのみになります。
まずは、甲社や甲社の経営株主と合意による
譲渡をする道を探すこととなります。
合意ができない場合に、
その他、少数株主権(帳簿の閲覧請求等)を
駆使しつつ、買取りに事実上応じてもらうように
交渉するか、
最近では、非公開会社の株式の買取業者も
でてきていますので、業者に売却するという
道も一応あります。
買取業者としては、一旦、株主から
対象株式を買取り、譲渡(取得)承認請求をして、
譲渡を不承認とされれば、買取請求をして、
会社法上の時価での買取を目指します。
一方で、承認されてしまうとその後は、
少数株主権を行使して、高額の買取を交渉していくというような
ビジネスモデルです。
D C F法や収益還元法などの
評価方法も併用しつつ計算し、
利鞘が取れる金額等と買取業者が判断すれば、
相続税評価額で買取業社が買取る場合もあり得ます。
2 ご質問②〜金額について
>可能な場合、相続税評価額での買取りは可能でしょうか?
> 話し合いになるとは思いますが、
> 相続人としては相続税評価額での買取りを、
> 強く要求できるものでしょうか?
上記のとおり、現状Bは買取請求ができるわけではありません。
お互いの合意によるものとなりますので、その中で、
納得いく金額を調整していくこととなります。
裁判などで算定される会社法上の時価評価は別として、
合意による場合には、
相続税評価額は一定のわかりやすい基準とはなりますので、
両者の利害調整ができれば、その金額での合意が
できる可能性はあります。
3 ご質問③〜全株を買取請求できるか?
>3.Aが所有していた株式の全株を買取請求することは可能ですか?
ご質問①のとおり、そもそも買取請求をすることが
できませんが、
例えば、前述の株式譲渡承認請求を利用して、買取請求を
していくという方法の場合には、譲渡対象株式数を
何個にするかは、Bの自由ですので、Aが所有してた
株式全てでも、それにBの保有している株式含めても、
行うこと自体は可能です。
よろしくお願い申し上げます。