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破産債権について

永吉先生

お世話になります。
●●と申します。

下記の件について、ご教示お願いします。

【前提】
A社:当事務所の顧問先、建設業の元請け
B社:A社の下請け、A社と資本関係なし

2021年3月
B社の資金繰りが厳しく、元請けであるA社がB社に
4,000万円程貸付をしている。

2021年4月
B社が契約していた月極駐車場の契約をA社が引継ぎ(契約者をB社→A社変更)、
A社が駐車場の料金を支払う方法に変更。
その後6月に破産の申し立てをする。

2021年7月
B社が破産手続開始決定。
A社はB社に対して4,000万円の貸付がある旨を破産管財人に届出。
破産債権の届出期限は2021/8/31です。

2021年9月
A社が2021年4月に契約を変更した駐車場を解約。
不動産屋から敷金の返金として6万円を受領。
※敷金はB社が支払、契約変更のため、A社が受領している。
2021年11月第1回の債権者集会が開かれる予定。
主な資産等ないので、配当は期待できない。
今回解約以外にあと2台敷金がある。

【質問内容】
①この6万円はB社への貸付金の減額として処理すべきと考えておりますが、
債権額を確定しているため、A社より雑収入として処理したいと
申し出を受けてます。雑収入での処理に問題はありますでしょうか。

②また、①の回答で貸付金として処理すべきと結論を頂いた場合に、
A社がリスクは取るから、雑収入として処理してほしいと言ってきた場合、
破産管財人に報告しないリスクとはどのようなものがあるのでしょうか。

以上です。よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜不当利得について〜

>①この6万円はB社への貸付金の減額として処理すべきと考えておりますが、
>債権額を確定しているため、A社より雑収入として処理したいと
>申し出を受けてます。雑収入での処理に問題はありますでしょうか。

ご指摘のとおり、駐車場の賃借人の契約に伴い
敷金に関する引き継ぎの合意がない限り、
(契約書があれば念のため契約書をご確認ください。)

敷金返還請求権は、旧賃借人(B社)から
賃貸人(不動産屋)対して発生するものとなります。

本来は、賃貸人からA社への敷金相当額の返済は、
法律上原因のないものであり、
賃貸人からの不当利得となりますので、

厳密には、B社への貸付金ではなく、
不動産屋への貸付金的性質を有することとなります。

つまり、本来的には、B社は不動産屋に対して、敷金の返還を
請求することができ、不動産屋は、A社に対して、
不当利得の返還請求ができるということになります。

ただし、税務上の収益認識(発生主義)
としては、本来は権利確定基準によりますが、
違法所得等の場合などの権利確定が観念
できない場合であっても、補充的に管理支配基準を
採用するのが判例等の考え方ですので、例えば、
過払金など受け取った際にも、益金算入すべきと
されています(返還された場合に更正の請求)。

したがって、A社として不動産屋に
敷金を返済しない方針であれば、
むしろ、税務上は雑収入処理をすることと
なると存じます。

2 ご質問②〜管財人への報告について

>②また、①の回答で貸付金として処理すべきと結論を頂いた場合に、
>A社がリスクは取るから、雑収入として処理してほしいと言ってきた場合、
>破産管財人に報告しないリスクとはどのようなものがあるのでしょうか。

上記のとおり、厳密には、
不動産屋のミスであり、不動産屋がB社に対して
敷金を返済する義務を負うこととなります。

ですので、金額が大きくないことも
考え合わせると、A社が報告しないという
ことで、A社に法的なリスクが生じるということは
考え難いです。

A社としては、不動産屋から返還請求を受ければ、
法的には返還することとなるというところでしょうか。
(これは、B社の破産の有無は関係ありません。)

おそらく実務上は、管財人が気がついて、
不動産屋に返還請求をしない限りは、そのような
ことはないとは思われます。

ただ、法的に正確に全体を処理する観点から
であれば、A社から不動産屋に敷金相当額の返金して、
不動産屋から管財人(B社)に対してその金額を
支払ってもらうということにはなります。

よろしくお願い申し上げます。

永吉先生

お世話になります。
●●です。

ご回答ありがとうございます。
追加で質問させてください。

敷金に関する引継ぎの合意が無い場合は、A社での雑収入が
妥当との事ですが、A社の駐車場の契約書を確認したところ
下記の通りとなっておりました。

【A社との契約書内容】
賃料 ○○
敷金 ○○
として、令和3年4月に貸主と契約書を締結しています。この内容から判断するに、敷
金は
A社に引き継がれていると思います。この時点で正しくは、B社への
貸付金と敷金を相殺して、相殺後の貸付金を破産管財人に提示しなければならなかっ
たと思います。

これは、①敷金に関する引継ぎの合意があったと解釈してよろしいのでしょうか?
また、②敷金の引継ぎ合意があった場合は、B社の破産債権を間違えて提示したと思
いますが、A社でそのまま雑収入に計上し
破産管財人に報告しないことへのリスクがある場合はご教示お願いします。

以上です。よろしくお願いいたします。

●●先生

追加でのご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

>敷金に関する引継ぎの合意が無い場合は、A社での雑収入が
>妥当との事ですが、A社の駐車場の契約書を確認したところ
>下記の通りとなっておりました。

前回の質問への回答は、敷金に関する引き継ぎの合意が
ある場合には、そもそもA社に敷金が帰属するので、
むしろ、引き継ぎがない場合に貸付金と敷金を相殺すべきか
という問題についての解説となります。

1 ご質問①

>【A社との契約書内容】
>賃料 ○○
>敷金 ○○
>として、令和3年4月に貸主と契約書を締結しています。この内容から判断するに、敷
>金は
>A社に引き継がれていると思います。この時点で正しくは、B社への
>貸付金と敷金を相殺して、相殺後の貸付金を破産管財人に提示しなければならなかっ
>たと思います。
>これは、①敷金に関する引継ぎの合意があったと解釈してよろしいのでしょうか?

まず、従前の敷金契約は、賃主と賃借人B社との契約と
なりますので、敷金に関する引継ぎ合意は、
A社、B社及び貸主の合意が必要です。
つまり、B社も合意当事者である必要があります。

いただいたA社と貸主の契約書を見る限りでは、
本来、貸主が令和3年4月時点で、B社に対して、
敷金を返還して、A社から資金を受け取るべきであった
ところを、行わずに誤って敷金をA社に支払ったとされる
可能性が高いようには思います。

ただし、事案の経緯など事実の評価から、この時点で、
A社、B社及び貸主間で、B社の貸主に対する将来の敷金返還
請求権を、A社に引き継ぐ合意があったとされる
可能性は0ではありません。

>この時点で正しくは、B社への
>貸付金と敷金を相殺して、相殺後の貸付金を破産管財人に提示しなければならなかっ
>たと思います。

そうだとしても、ご指摘の場合となるのは、

①令和3年4月時点で、A社とB社の間で、
B社の将来の敷金返還請求権の対価として敷金相当額をA社がB社に支払う
合意があったこと
及び
②A社とB社一方または合意により、貸付金と①の対価を相殺する意思表示が
あったこと

という2つの要件を満たした場合になるかと存じます。

敷金返還請求権自体は明渡時に発生するものであり、
かつ、同一当事者に債権・債務が立ったとしても、相殺の
意思表示がない限り、当然に貸付金(債権)が消滅するものでは
ないからです。

2 ご質問②

>②敷金の引継ぎ合意があった場合は、B社の破産債権を間違えて提示したと思
>いますが、A社でそのまま雑収入に計上し
>破産管財人に報告しないことへのリスクがある場合はご教示お願いします。

債権の提示額自体に誤りがある場合とは、
上記の①と②の要件を満たす場合ということに
なると思いますが、

①と②の要件が明確に証明できるような事案では
ないように思われる上、本来管財人が債権額の
正確性やB社の債権を調査する立場にあることから
すると、疑問点があれば、管財人から指摘が
入るので、現実的には、リスクが具体化することは
ほとんどないものと思われます。

よろしくお願い申し上げます。