お世話になっております。
(前提)
A社は、取締役会設置+監査役(1名)の株式会社である
(質問)
1.監査役が1名しかいない場合、株主総会で決定された監査役報酬の総枠の範囲内で、当該監査役の報酬を当該監査役が決定することは問題ありませんでしょうか?
2.A社は過去において、当該監査役1名の報酬の具体的な金額を株主総会で決議していました。来期の定時総会から、上記の方法に変更することは問題ないでしょうか(報酬の決定方法を、毎期継続して同一の方法にする必要はないという理解ですが、念のためご教示頂ければ幸いです)?
よろしくお願いいたします。
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜監査役が自ら報酬を決めること〜
> 監査役が1名しかいない場合、株主総会で決定された監査役報酬の総枠の
> 範囲内で、当該監査役の報酬を当該監査役が決定することは問題ありませんで
> しょうか?
明文の規定や明確な判例がないところですが、
そのような方法で監査役の報酬を決定するように
しても、問題はないと解されています。
監査役の報酬については、原則として、
株主総会(または定款)にてその額を
定めることとされています(会社法387条1項)。
監査役の報酬を株主総会の決議事項としている趣旨は、
取締役を監査する立場にある監査役の報酬を
取締役(会)が決定すると監査役の独立性が維持
できなくなるという点にあります。
そして、監査役が2名以上の場合には、
株主総会で報酬額の総枠を決議し、その範囲内で、
監査役が協議のうえ、各監査役の具体的な報酬額を
決定することもできます(会社法387条2項)。
監査役が1名の場合の扱いについては、
明確な規定はありませんが、
株主総会がその上限額を定めている以上、
株主にとって不利益はありませんし、
監査役の独立性の維持という、
上記の趣旨にも反しないため、
ご指摘の方法によることができると考えます。
2 ご質問②〜方法の変更について~
>A社は過去において、当該監査役1名の報酬の具体的な金額を株主総会で決議していました。
>来期の定時総会から、上記の方法に変更することは問題ないでしょうか(報酬の決定方法
>を、毎期継続して同一の方法にする必要はないという理解ですが、念のためご教示頂ければ
>幸いです)?
そうですね。
おっしゃるとおり、
>毎期継続して同一の方法にする必要はないという理解
で問題ありませんので、変更することも可能です。
ただ、対監査役との関係で、
会社側から一方的に監査役の報酬額を減額するには、
合理的な理由が必要ですので、監査役報酬を下げる
ということですと、別の問題があります。
(もちろん、監査役の同意があれば問題ないですし、
今回の質問には関係ないように思います。)
よろしくお願い申し上げます。