会社法 その他

「日において」の解釈

法令用語の解釈なのですが、「日において(~の要件を満たす)」と言った形で規定される場合、その日24時間のいずれかの時点で要件を満たせばクリアなのか、それともその日中要件を満たせばいいのか、そのどちらになるのか判断に悩んでおります。

例えば、会社法では以下の条文があります。


会社法467①

株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。
二の二 その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡(次のいずれにも該当する場合における譲渡に限る。)
イ 当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えるとき。
ロ 当該株式会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。

このロですが、効力発生日の中途で過半数の議決権を有することになった場合、この規定の適用はなくなりますか?

よろしくお願いいたします。

1 ご質問

>法令用語の解釈なのですが、
>「日において(~の要件を満たす)」と言った形で
>規定される場合、
>その日24時間のいずれかの時点で要件を満たせばクリアなのか、
>それともその日中要件を満たせばいいのか、
>そのどちらになるのか判断に悩んでおります。

2 回答
(1)条文の要件解釈と「日において」の解釈

ご存知のとおり、民法に定める「期間の計算」
(民法138条〜)とは異なり、

ご質問の各要件該当性と「日」の
どの時点で要件に該当すれば良いのか
の関係については特段決められているわけでは
ありません。

この部分は、各条文の構造などによる
条文解釈により定まることになります。

下記、ご質問の会社法467条
について解説します。

>—
>会社法467①
>株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。
>二の二 その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡(次のいずれにも該当する場合における譲渡に限る。)
>イ 当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えるとき。
>ロ 当該株式会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。
>—

>このロですが、効力発生日の中途で過半数の議決権を有することになった場合、この規定の>適用はなくなりますか?

会社法467条1項2号の2は、
親会社が子会社株式を譲渡する場合には、
子会社の事業を譲渡するに等しいことから、
これを、事業譲渡と同様に株主総会決議事項
とするもので、平成26年改正において、
新設された条項です。

そして、この条文は、株式譲渡の
効力発生日の「前日までに」
株主総会決議の承認を受けなければならない
とする行為規範(結果ではなく会社の行為に
ついて定めるもの)になります。

そこから考えるとその行為規範の
要件該当性の判断が、譲渡の効力が発生した
「日」の最初(効力発生日の0:00)または
契約ですぐに効力が発生するものですと契約の時点で
判断するとしなければ、何を基準に要件を判断して
行動すべきかわからなくなってしまいます。

したがって、この条項における「その日」
においてとは、譲渡の効力発生時点において
と考えることになるでしょう。

>このロですが、効力発生日の中途で過半数の議決権を有することになった場合、
>この規定の適用はなくなりますか?

よって、この場合でも、
条文の要件該当性という意味では
株主総会の承認が必要といえるでしょう。

ただし、このようなケースですと、
株主総会の承認のない子会社の
株式譲渡の効力として、

無効とまでするのかというのは、
別の議論で、条文の要件を離れた
「効果」の解釈の問題になります。

裁判所としては、実質的(結果論として)には
趣旨に反していないと考え、効力を無効とまではしない
(瑕疵の治癒があった)という
結論もとりうるところかとは思います。

その場合には、
例えば、前日より前から
同一の日の途中で、会社が子会社
株を取得することが予定されていた
などの個別具体的ケースによって、

例外的に株式譲渡を有効なものと
して扱うという結論もあり得るという
ところです。

ただし、これは個別具体的なケースごとの
判断にはなるかと思いますし、
あくまでも、「要件」の判断ではないため

リスクが伴いますので、狙ってするものでは
ないでしょう。

よろしくお願い申し上げます。