税理士●●です。
預金債権に関する遺産分割協議書の文言についての解釈をご教示下さい。
【概要】
被相続人は甲
相続人は、A、B、Cの三人
8つの金融機関に預金債権があります。
相続人が作成した遺産分割協議書の文言では
「第1条 相続人は、被相続人甲の遺産は次の各号に掲げる不動産及び預貯金等の金融資産等であることを
確認する。」と書かれています。
まず、第1項の不動産から始まって最後の第6項から15項に金融機関明が記載されています。
そして、第2条1号と2号で不動産を相続する人を特定しています。
さらに、第2条の3号と4号で
3号「前条第6号から第15号の遺産は、代表相続人として一旦Aが相続することとし、
解約及び払戻、換価換金、移管後にAが指定する口座へ入金する。」
4号「Aは一旦代表して相続した遺産から、Bに600万円、Cに1050万円を支払う。」
となっています。
【質問】
私が疑問に感じた点ですが、第2条4号で、一旦Aが相続し、その中から
BとCに支払うということは、贈与にならないかということです。
ちなみに、これは代償金として払うものではありません。
あくまでもAは解約等の手続きをするだけです。
また、BとCが相続する預金債権の残額(いわゆる1円単位の端数つきで)は、
Aが相続します。
今回の記載方法がマズイ場合はどのように記載すべきでしょうか?
よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>第2条の3号と4号で
>3号「前条第6号から第15号の遺産は、代表相続人として一旦Aが相続すること
>とし、
>解約及び払戻、換価換金、移管後にAが指定する口座へ入金する。」
>4号「Aは一旦代表して相続した遺産から、Bに600万円、Cに1050万円を支払
>う。」となっています。
>私が疑問に感じた点ですが、第2条4号で、一旦Aが相続し、その中から
>BとCに支払うということは、贈与にならないかということです。
>ちなみに、これは代償金として払うものではありません。
>あくまでもAは解約等の手続きをするだけです。
>また、BとCが相続する預金債権の残額(いわゆる1円単位の端数つきで)は、
>Aが相続します。
2 回答
そうですね。
ご指摘の通り、形式的(文言的)に見ると
先生のご指摘のとおり、Aに一旦相続された
財産をその他の相続人に支払う合意とも読めるため
「贈与」に該当するとも解釈できそうな記載にはなっています。
一方で、「代表相続人として」とされており、
遺産分割合意の合理的意思解釈としては、
解約手続き等をAが単独で行えるように
一旦Aに「相続」という形式をとっている
もので、
実質的には、預金債権を換価(解約等)の後、
>Bに600万円、Cに1050万円を支払う。
>BとCが相続する預金債権の残額(いわゆる1円単位の端数つきで)は、
>Aが相続します。
という換価(金)分割の合意であると解釈される可能性
が極めて高いものとは思います。
贈与税の関係で言うと、不動産の事案ではないですが、
以下と同様に考えて良いと思われます。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/13/01.htm
>今回の記載方法がマズイ場合はどのように記載すべきでしょうか?
上記のとおりですが、疑義自体はおっしゃる通り
生じますので、より安定性を持たせるとすると
「A、B、Cは、前条第6号から第15号の遺産の
解約及び払戻及び換価換金をAに対して代表相続人として委任し、
Aが換金した金銭について、Bが600万円、C1050万円及び
Aがその残額を取得するものとする。」
などかと思います。
(他の協議書の記載に合わせて調整は必要ですが)
ただ、先生からご指摘いただいたAに単独相続させる
ような遺産分割協議書でも、上記の記載でも、
金融機関の手続き(に必要な提出書類等)
については、各金融機関の対応にバラ付きがあるため、
一概にどちらの方が手続きが楽かどうかという点は
申し上げられません。
結局のところ、全員の署名押印の下、同様の手続きを
してくれと言われることもありますので、
換価をAに任せるのではなく
普通に遺産分割で分配額を確定させた上で、
相続人全員から書類を集めて通常とおりの手続きを
するのと大差ないこともあります。
よろしくお願い申し上げます。