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合意解除に伴う消費税の取り扱いについて

永吉先生

お忙しいところ恐縮ですが下記、ご教示いただけますでしょうか。

顧問先法人甲(1月決算法人)は、消費税において原則課税の法人になっています。

甲は平成30.12月に〇〇県土地開発公社より土地を購入しました。
その土地に工場を新たに建設して現在地からの移転を計画していましたが、
建築資金調達の問題とコロナによる売上不振が重なり、
工場を建設しない、移転計画中止、の決定をしました。

土地は、購入後にボーリング調査は行ったものの、他には何も手を加えておらず、未使用の状態となっていました。
(甲としては、この調査をしたといえ、土地を事業の用に供しているとは考えておりません)

元の所有者である土地開発公社に土地の処分について相談したところ、
売買契約書の第8条(指定用途等)にある、『契約締結から2年以内に工場建設に着手』が
できなくなったという理由での契約解除ということで、購入した金額と
同額で買い戻してもらえることになり、同額がすでに入金(令和3年3月)されています。

公社とは、今回、新たな売買契約ではなく契約解除合意書(令和3年2月)というものを結び、原契約の解除として所有権移転登記がなされ、
登記簿の登記原因は「合意解除」となっていました。

(ご質問)
この場合、入金された土地の代金の消費税の処理については、
土地の売買ではないということで、土地の売却⇒消費税は非課税売上ではなく、そもそも土地の購入がなかったもの⇒消費税は非課税仕入に係る対価の返還として処理して良いものでしょうか?

今回の取引金額が168百万円で、非課税売上になるかどうかで課税売上割合に大きく影響するため、どのように判断したらよいかご教授いただきたく、
よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>元の所有者である土地開発公社に土地の処分について相談したところ、
>売買契約書の第8条(指定用途等)にある、
>『契約締結から2年以内に工場建設に着手』が
>できなくなったという理由での契約解除ということで、購入した金額と
>同額で買い戻してもらえることになり、同額がすでに入金(令和3年3月)
?されています。

>公社とは、今回、新たな売買契約ではなく契約解除合意書(令和3年2月)
>というものを結び、原契約の解除として所有権移転登記がなされ、
>登記簿の登記原因は「合意解除」となっていました。

>この場合、入金された土地の代金の消費税の処理については、
>土地の売買ではないということで、土地の売却⇒消費税は非課税売上では
>なく、そもそも土地の購入がなかったもの⇒消費税は非課税仕入に係る対価>の返還として処理して良いものでしょうか?

>今回の取引金額が168百万円で、非課税売上になるかどうかで
>課税売上割合に大きく影響するため、
>どのように判断したらよいかご教授いただきたく、
>よろしくお願いいたします。

2 回答

今回のご質問は、この登記上の合意解除により入金された金額が、
課税売上割合の分母となる
「当該課税期間中に国内において行つた資産の譲渡等(・・・省略・・・)の対価の額」
(消費税法施行令48条1項1号)
といえるのか否かという問題になります。

>土地の売買ではないということで、
>土地の売却⇒消費税は非課税売上ではなく、そもそも土地の購入が
>なかったもの

とのことですが、合意解除の場合、
民事上は当事者間では遡及して、当初の売買契約がなかった
こととなるというのが通説ですが、錯誤取消等法定のものと異なり、
新たな合意(当事者の自由意思)により行うものであることに
変わりはないため、税務上はこの遡及効については、
考慮しないという判断が裁判例等では一般的です。

結局のところ、税務上は、実態としてどのような意味を持つ
合意なのかを経緯等を含めて判断するということに
なります。

また、
>売買契約書の第8条(指定用途等)にある、『契約締結から2年以内に工場
>建設に着手』ができなくなったという理由での契約解除

とのことで、約定(契約時に定めた事由)による解除(約定解除)
とも評価できそうです(その場合、登記原因は単に「解除」となります。)。

契約書自体を見ていないので、何とも言えないですが、
おそらく、土地開発公社からということで、
以下に類似する契約がなされていたと考えられます。
https://www.kaiho.mlit.go.jp/01kanku/nyusatsu/keiyakusyo/25kokuyuzaisanbaibai_youtositei.pdf

仮にこれが約定解除だとしても、税務上はその実質から判断
されますので、その実質は、上記の契約書でいうところの第15条
に違反し、第18条第1項(1)の事由による売買物件の買戻し(再売買)
であると評価される可能性が高いように個人的には思います。
(担保目的の買戻特約や再売買の予約でもないケースかと
思いますので。)

様々調査しましたが、消費税の課税売上割合という点に
関して、先生からご質問いただいた事項について直接的な
記載を発見することができませんでしたので、
実務上は、非課税売上としなくても、何も指摘を受けない
というようなこともあるように思います
(そういう意味では税務署に事前相談してみるのは
ありかと思います。)が、

当初の売買契約から一定期間が経過してしまっていることや
契約書の文言等を合わせて考えると、
いざ更正をされた場合に税務訴訟で勝訴できるかというと、
難しいのではないか(もちろん争う余地はあるとは思います。)と
個人的には思います。

様々調査しており、お時間をいただいた上、
私見も含む内容で恐縮ではございますが、よろしくお願い申し上げます。