いつもお世話になります。
●●です。
不動産の遺留分算定の基礎となる財産の評価について教えてください。
私たちが税理士や行政書士の立場として、
お客様から遺言を書きたいが遺留分はケアした遺言にしたい。
その金額の目安はいくらですか。
とご相談をいただくことがあります。
悩むのは不動産の評価額です。
遺留分算定の基礎となる財産は時価評価を行うと理解しています。
遺留分の侵害があった場合
①当事者間の合意
②家庭裁判所の調停
③地方裁判所の裁判
と順番に争いが行われると思います。
実際の実務としては、不動産の評価額のために、不動産鑑定士の鑑定書により、時価
評価を行っているのでしょうか。
それとも、実際は相続税評価額で評価されることが多いのでしょうか。
①②③のケース別にどのようにされているのか(またはその割合)を感覚でも結構で
すので教えていただければ幸いです。
例えば、裁判所が関与すると必ず不動産鑑定士の鑑定評価をとるなど。
また、遺留分を侵害された者に未成年がいる場合に、未成年を保護する必要性から実
務が変わるようであれば、併せて教えていただければ幸いです。
私たちは相続税の申告にあたり、未成年が相続人であり、家庭裁判所を通した遺産分
割協議書を見る機会は多いのですが、
ほぼ全てのケースで私たちが相続税申告のために算出した相続税評価額を基準に、未
成年の法定相続分に応じて遺産分割が行われているように見えます。
不動産の遺留分算定の基礎となる財産の評価の場合の実務がどのように行われている
か教えていただければと存じます。
よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>悩むのは不動産の評価額です。
>遺留分算定の基礎となる財産は時価評価を行うと理解しています。
>遺留分の侵害があった場合
>①当事者間の合意
>②家庭裁判所の調停
>③地方裁判所の裁判
>と順番に争いが行われると思います。
>実際の実務としては、不動産の評価額のために、不動産鑑定士の鑑定書により、
>時価評価を行っているのでしょうか。
>それとも、実際は相続税評価額で評価されることが多いのでしょうか。
>また、遺留分を侵害された者に未成年がいる場合に、未成年を保護する必要性から実
>務が変わるようであれば、併せて教えていただければ幸いです。
2 回答
(1)法的な手続きを利用しない合意の場合
先生がご指摘の
>①当事者間の合意
の部分です(なお、調停も当事者の合意になります)。
この場合、実務上のところでいうと、
先生もご認識のとおり、コストもかかりますし、
不動産鑑定までしているケースは稀です。
(それで合意できるかは別問題)
○相続税評価額
または
○不動産業者から見積額
等を基準に判断しているケースが多いです。
弁護士が入ると後者の見積りは一旦とりますね。
上記は未成年者の場合も、同様かと思います。
>ほぼ全てのケースで私たちが相続税申告のために算出した相続税評価額を基準に、未
>成年の法定相続分に応じて遺産分割が行われているように見えます。
遺留分侵害額の請求がある場面は、
家庭裁判所の遺産分割と異なり紛争が顕在化している
場面なので、実務上同様には考えられないと思います。
(2)調停による場合
この場合は、対象の不動産価額がその紛争において、
どこまで争いに関連しているか等に依存します。
得られる金額と比較して、
どこまでコスト(時間・費用)をかけるべきかという点を判断することが多いです。
また、調停も結局のところ、当事者の合意になるので、
不動産の評価について、当事者に大きな隔たりがある場合
調停委員からは不動産鑑定を勧められることはあります。
一方で、そこまで争いがあるのであれば、
どうせ(3)の裁判になる可能性が高いと判断すれば、
調停は不調で終わらせて、鑑定は裁判でというところになります。
(逆にいうとその場合、この段階では合意できないと判断している
ことになります。)
この辺りは、各事案での個別判断になりますね。
なお、未成年者であってもこの点は変わりません。
(3)地方裁判所の裁判
こちらも当事者間で、不動産評価額について
双方の主張する金額について、あまり乖離がなければ、
不動産鑑定まではしないこともありますが、
明確に争点になっている場合で、
和解ではなく、判決までいく場合は、
まず不動産鑑定は行われると考えて
いただいた良いかと思います。
要は判決を書く場合、裁判官としても、
高裁で覆されたくないですから、専門家に
頼んで出した評価額なんだという前提が
欲しいので、実務上はまずその方向に
誘導することになるからです。
なお、未成年者であってもこの点は変わりません。
(4)事前対策について
事前対策については、相続税評価額程度で
見積計算することも多いです。
これは、結局のところ、当事者が相続税申告で
目にする金額の近似値になりやすいですから、
納得感を得てもらいやすく、紛争化するリスクが
小さいという理由になります。
一方で、不動産の場所や性質によって、
高額になるケースでは、この段階で一旦鑑定評価をするか、
そもそも遺言での分配金額を大きくしておくかや
遺言以外の対策(生命保険等)などを合わせて
行うか等を検討することとなると思います。
よろしくお願い申し上げます。