お世話になっております。
事業譲渡にあたり、売手の法人と同名の法人を設立して
事業譲渡を受けることに法的問題はありますでしょうか?
よろしくお願いいたします。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>事業譲渡にあたり、売手の法人と同名の法人を設立して
>事業譲渡を受けることに法的問題はありますでしょうか?
2 回答
(1)登記上の問題
まず、同一の本店所在地に同じ称号の会社がある場合には、
商号登記ができません。つまり、設立登記が入りません。
したがって、同一名の会社を設立する場合には、
いずれかの本店登記を変える必要があります。
(2)民事上の責任
ア 商号続用の責任
「事業を譲り受けた会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、
その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う」
(会社法22条1項)ことになります。
ただし、遅滞なく、譲受会社が債務を
弁済する責任を負わない登記をした場合には、
責任を負いません(同条2項)。
イ 詐害行為等
譲受会社が、債務を引き継がずに資産のみを引き継ぎ、
譲渡会社の債権者が債権の弁済を受けられなくなる場合、
詐害行為取消権(民法424条)が行使され、事業譲渡が
取消される可能性があります。
こちらは、一般的な事業譲渡でも問題となるものですが、
商号が同一の会社を設立したりするケースでありがちなので、
念のため記載しました。
ウ その他
なお、事業譲渡は、組織再編と異なり、
個別の権利義務の集合体に過ぎませんので、
法的には同一の会社名だからといっても、
債権者や契約の相手方等の承諾がなければ、
その効力を主張できなかったり、
権利関係等の解除事由等になるので注意が必要です。
(事実上何も言われないということはあるかもしれませんが、
何かの時点で発覚して明渡等を請求されることもありますので、
注意が必要です。)
よろしくお願い申し上げます。