いつも大変お世話になっております。
税理士の●●です。
(前提)
被相続人① A 令和元年11月亡
被相続人② B 令和2年3月亡
相続人 C
BとCはAの子
Bは独身(相続人は兄であるBのみ)
(質問)
Aの財産はBとCが相続するかAがすべて相続するか選べると思いますが、
Aの相続税申告に関して、遺産分割協議書は必要でしょうか。
必要な場合にはどのような内容を記載すべきかご教授願います。
お手数をお掛けしますが、よろしくお願いします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
>(前提)
>被相続人① A 令和元年11月亡
>被相続人② B 令和2年3月亡
>相続人 C
>BとCはAの子
>Bは独身(相続人は兄であるBのみ)
こちらは、Bの相続人が兄であるCのみであり、
Aの現状の相続分の保有者がCだけという前提で
よろしいでしょうか。その前提で回答します。
1 ご質問
>Aの財産はBとCが相続するかAがすべて相続するか選べると思いますが、
>Aの相続税申告に関して、遺産分割協議書は必要でしょうか。
>必要な場合にはどのような内容を記載すべきかご教授願います。
こちらは、Aの財産は、BとCが相続するか「C」がすべて相続するか
という意味かと思いますので、これを前提で回答します。
2 回答
(1)民事上の1人分割の可否
まず、民法上、遺産分割は、遺産共有となっている
財産を分割するものと解されていますので、Aの遺産分割が
未了の間に、Bが死亡した場合には、C単独所有となりますので、
遺産分割を行うことができません(東京高判平成26年9月30日)。
つまり、Aの財産はCがすべて相続するということになり、
BとCが相続するという形の選択はできません。
したがって、本来、遺産分割協議書は不要となります。
(2)特例適用等の可否
民事上の1人となった場合には、相続税申告において、税務上の特例等の
適用を受けられるかについては別途難しい議論があります。
おそらくBとCが兄弟であることから、本件には
あまり関係がないように思いますので、以前会員の先生から
いただいたご質問への回答とご質問を以下転載いたします。
仮に税務上、Aの相続財産をBも相続したことにしたいという
ケースであればご参考になさっていただければ幸いです。
なお、ご質問いただいた会員の先生からは、私の回答
通りの内容で、更正の請求が認められたというご報告を
いただいております。
=======以下転載です。=======
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【ご質問のメール】
永吉先生
いつも大変お世話になっております。
表題の件について、ご教示頂ければ幸いです。
父Aの相続開始1年後に母Bが死亡しました。
第一次相続の相続人は、母Bと相談者の2名でしたが、遺産分割協議が調わなかったため、
未分割で相続税の申告納税を行っており、母Bについては配偶者の税額軽減の適用を行っておりません。
第一次相続における配偶者の税額軽減を適用(更正の請求)するためには、
相基通19の2―5のとおり「当該配偶者の取得した財産として確定」させることが必要です。
第二次相続の相続人は相談者のみの単独相続ですので、遺産分割協議書の作成を行いません。
この場合、どのような手続により「当該配偶者の取得した財産として確定」させればよろしいのでしょうか。
以上です。
どうかよろしくお願いします。
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【永吉の回答】
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>相基通19の2―5のとおり「当該配偶者の取得した財産として確定」させる
>ことが必要
>第二次相続の相続人は相談者のみの単独相続ですので、
>遺産分割協議書の作成を行いません。
>この場合、どのような手続により
>「当該配偶者の取得した財産として確定」
>させればよろしいのでしょうか。
2 回答
これは非常に難しい問題ですね。
誤解が生じるおそれがあるため、
理由から回答いたしますが、
ご容赦ください。
(1)通達の趣旨
そもそもこの通達は、
「当該配偶者の取得した財産として確定」できる前提の記載
となっていますが、
法律上は、母Bが死亡している以上、
その者が「取得した財産として確定」させる
ことはできません。
この通達の趣旨としては、
配偶者が遺産分割の確定により財産を取得した後に
死亡したケースに比べて、相続税の計算上著しく
不公平な結果となることを防ぐため、
政策的に国税側が納税者に有利解釈し、
遺産分割協議書の記載があれば、
このように扱うこととしているものと
ご理解いただくことになると思います。
(2)1人遺産分割の可否
そして、先生もご指摘の通り、
相続人が1名の場合には、
そもそも
遺産分割をすることができない(東京高判平成26年9月30日)
とされていますので、
法的に何か手続きがあるわけではありません。
しかし、そもそもこの通達が上記の一種の有利解釈
に基づいており、相続税の計算上著しく不公平な結果を
もたらすことを防止するという趣旨は、
今回の事例でもあてはまります。
したがって、私見としては、
財産承継確認書等(名目は何でも良いです)で、
「相談者は、父Aの相続により以下の財産を母Bが取得したことを
確認する」
・財産A
・財産B
・財産C
・財産D
・財産E
・・・
」
等の文書を作成して、更正の請求をする
という流れになるかと思います。
なお、1人分割を認めないという上記裁判例を受けて、
登記実務は、以下のようになっております。参考までに。
(ただ、生前に遺産分割が口頭でもされてないにも
かかわらず、されていたという記載をすることが
許されるわけではありません。)
(3)登記実務の参考例
数次相続が発生した場合の通達
(平成28年3月2日民二第154号)
http://www.toki-joho.com/2016/03/h280302min2-154.html
(現在、ネット上では公になっていないため、
他人のリンクとなります。)
概要を申し上げると、
「遺産分割は書面性が要求されていないので、
二次相続発生前に、口頭で遺産分割協議がされている場合、
遺産分割協議書がなくても、分割は有効であり、
二次相続における相続人は、その内容を証明できる
唯一の相続人であるから、当該協議の内容を明記して
二次相続人が作成した証明書は、登記原因証明情報足りうる」
ということです。
(4)まとめ
国税側としては、通達が遺産分割前提で記載
されていることを理由として、
更正の請求を認めないということもあり得る
ところかと思いますが、
そもそも法律と乖離している上記通達の運用を
このケースに限って除外するということには、
かなり強い違和感が残るところです。
もし、可能でしたら、更正の請求をした結果や
仮に拒絶された場合の拒絶理由などについて、
ご教示いただけますと大変助かります。
よろしくお願い申し上げます。
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