未分類

株の買取金額と法人株主の帳簿閲覧権の範囲

永吉先生、いつもありがとうございます。
●●です。

保有割合10%ぐらい所有している、旧経営者の親族が、
株を購入してもらいたいため、株価計算をしたいとします。
つまり、旧経営者の親族で足元を見られた金額にならないかという相談です。
発行法人には顧問弁護士がいます。

質問1

会社規模は大法人です。
50%以上保有しているグループはいないです。
15%以上保有しているグループは複数あります。
相談者は、単独では15%はないですが、相談者の親族の所有も合わせれば、15%にな
ります。
この状況下で、含み益があるため、
発行法人に自己株式の購入ですとみなし配当課税になるため、
発行法人の関連会社に買い取ってもらい分離譲渡20.315%にしたいと考えています。
買取金額は一般的にはどんな金額が妥当でしょうか?
発行法人からは、類似の金額の提示をしてきています。

質問2

買取金額について商談がこじれた場合、
どの金額かは裁判所が買取金額を査定するかもしれませんが、
帳簿閲覧権の行使をしたいものとします。
その際に、決算書は閲覧の範囲に入っていますでしょうか?
法人税の申告書はもらえたり、もらえなかったりとネットに記載がありますが、
一般的には、もらえないことが多いでしょうか?
何年分を請求することが可能でしょうか?

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜買取金額について

>この状況下で、含み益があるため、
>発行法人に自己株式の購入ですとみなし配当課税になるため、
>発行法人の関連会社に買い取ってもらい分離譲渡20.315%にしたいと
>考えています。
>買取金額は一般的にはどんな金額が妥当でしょうか?
>発行法人からは、類似の金額の提示をしてきています。

まず、現在の状況ですと、そもそも売手も買手も、
株式を売ることや買うことを法的に請求できるものでは
ないため、合意した金額ということになります。
つまり、裁判所でも価格決定がされることはありません。

会社法上で裁判所に価格決定の申し立てなどができるケースであれば、
(例えば、株主が第三者に株式を売却する譲渡承認請求をして、
会社が拒否する場合の、株主から会社に対する買取請求の場面など)

会社の状況によりますが、
D C F法や収益還元法などが考慮されることとなります。
(財産評価通達による評価は基本的に採用されません。)

ただ、一般的にそのようなケースではない場合、
合意金額として、税務上の評価額というのは、
当事者にとって納得感を得やすいというところで、
税務上の評価額や純資産価額で合意するということも
多いようには思います。

>発行法人からは、類似の金額の提示をしてきています。

とのことですが、旧経営者の親族が足元を見られた
金額にならないか不安ということであれば、
決算書などを取得はして、できる限り納得感が
ある金額で合意することが良いかと思います。

ただ、現状では、その金額では買い取らないと言われてしまえば、
それまでです。

2 ご質問②〜決算書及び申告書等の開示請求について

>買取金額について商談がこじれた場合、
>どの金額かは裁判所が買取金額を査定するかもしれませんが、
>帳簿閲覧権の行使をしたいものとします。
>その際に、決算書は閲覧の範囲に入っていますでしょうか?

>何年分を請求することが可能でしょうか?

上記のとおり、現状ですと裁判所が株式の金額を評価決定する
ことはありません(請求権がないため)。

決算書の閲覧については、
まず、少数株主権である会計帳簿等の閲覧請求は、
帳簿自体とその根拠資料に関するものですので、決算書は含まれませんが、

別の請求権として、法的には株主であれば誰でも、
計算書類等(B/S,P/L含む)の閲覧または写しの交付請求を
することが可能です(会社法442条2項)。

期間ですが、定時株主総会から1週間前(取締役会設置会社の場合2週間前)
から5年間は会社が計算書類を本店に備え置きをする義務がありますので、
基本的には5期分は請求できると考えていただければ良いでしょう。

なお、条文の形式上、備置きの期間を経過しても、
閲覧請求できるようにも読まれますが、東京地裁平成27年7月13日などの
裁判例は、備え置き期間を経過した場合の請求は認められないものとしています。

>法人税の申告書はもらえたり、もらえなかったりとネットに記載がありますが、
>一般的には、もらえないことが多いでしょうか?

会計帳簿等の閲覧請求権として法人税申告書等の請求が
できるかという点について、学説上は、争いがありますが、

裁判例及び実務では、法人税申告書の控え及び添付資料は、
請求できないものとされています。

もちろん、要求して、任意に出しでくれるのであれば
良いのですが、法的に請求できるものではないという趣旨です。

よろしくお願い申し上げます。